米東部ペンシルベニア州の砲弾工場を訪れたウクライナのゼレンスキー大統領(中央)=2024年9月22日、米陸軍提供・AP

 ウクライナのゼレンスキー大統領と、米共和党のトランプ前大統領の関係がぎくしゃくしている。ウクライナ側には、トランプ氏が11月の大統領選で返り咲いた場合、領土の一部をロシアに譲る条件で停戦を迫られるとの警戒感が根強い。両氏は互いに批判し合っており、27日の会談の行方が注目される。

 「トランプ氏は戦争を止める方法を知っていると考えているかもしれないが、実際は知らないと思う」。ゼレンスキー氏は22日の米誌ニューヨーカーのインタビューで「大統領選で勝てば就任前に戦争を終わらせる」と豪語するトランプ氏についてこう指摘した。

 一方、トランプ氏は23日の集会で「ゼレンスキー氏は最高のセールスマンだ。米国に来る度に600億ドルを持って帰る」などと皮肉った。さらに25日には「(ロシアとの)取引を拒む男に我々は何十億ドルも与え続けている」と批判した。

 「米国第一」を標ぼうするトランプ氏はかねてウクライナへの巨額の支援継続に懐疑的だとみられてきた。10日にあったハリス氏とのテレビ討論会では司会者から「ウクライナの勝利を望むか」と聞かれたが、直接の回答は避け「戦争を止めたい。戦争を終わらせることが米国の最大の利益だ」などと主張した。

 共和党の副大統領候補のバンス上院議員も、ウクライナ領内にある現在の境界に非武装地帯を設けて和平を実現することや、ウクライナが望む北大西洋条約機構(NATO)の加盟に反対する姿勢を示す。

 こうした中、共和党の議員もゼレンスキー氏が「民主党寄り」だとして批判を強めている。共和党のジョンソン連邦下院議長は、ゼレンスキー氏が22日に大統領選の接戦州の一つの東部ペンシルベニア州の砲弾工場を視察した際に共和党の議員が招かれなかったとして問題視。25日に「選挙戦への干渉」だとして、ウクライナ側に視察を計画した駐米のウクライナ大使を解任するよう求めた。

 ジョンソン氏は4月、共和党内にウクライナへの支援継続に慎重な意見が多い中、2023年末で底を突いていたウクライナへの支援の再開を超党派でまとめた経緯がある。ゼレンスキー氏は難しい対応を迫られそうだ。【ワシントン松井聡】

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