米商務省は23日、インターネットと接続する「コネクテッドカー(つながる車)」や自動運転車に関して、国家安全保障上の懸念を理由に、中国やロシアの技術を用いた車両の販売や輸入を禁止する規制案を発表した。安価な中国車が米市場に流入する前に事実上締め出すだけでなく、米欧や日韓の自動車メーカーのサプライチェーン(供給網)から中国の業者を排除する狙いもある。
規制案によると、自動車とネットをつなぐシステムのハード、ソフトウエア、自動運転システムのソフトウエアに関し、中国やロシアと関連がある部品を使った車の販売や輸入を禁止する。ソフトウエアの規制は2027年モデル、ハードウエアの規制は29年1月もしくは30年モデルから始める。
レモンド商務長官は電話会見で「敵対国による監視や遠隔操作によって、米国民のプライバシーや安全が脅かされる可能性がある。極端な場合、敵対国が一斉に車のネット接続を切断し、車を乗っ取ることも可能だ」とリスクを指摘。中国などの技術が米国の自動車業界で広まる前に対処する重要性を訴えた。
米政府は今年2月、中国など「懸念国」の技術を使ったコネクテッドカーに関して、国家安保上のリスクに関する調査を始めると発表。7月末には、日本や韓国、欧州連合(EU)、インドなどと「コネクテッドカーのリスク」に関する多国間会合を初めて開催していた。
米高官によると、規制案の策定にあたっては、世界の主要な自動車メーカーや業界団体とも意見交換した。またロシアのサイバー攻撃や自動車産業へのてこ入れの動きを受け、ロシアも規制対象に加えた。今後30日間、パブリックコメントを募集し、最終的な規制は来年1月のバイデン大統領の任期末までに公表する見通しだという。
供給網における安保上のリスクは、今月レバノンでポケベルや無線機が一斉に爆発した事件でも浮き彫りになった。事件にはイスラエルが関与したとみられている。米高官によると、商務省はドローン(無人機)やクラウドサービスについても、安保上のリスクを分析し、規制の是非を検討している。【ワシントン秋山信一】
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