「非暴力」の象徴として国連本部に設置されている彫刻「発射不能の銃」の前に置かれた未来サミットのオブジェ=ニューヨークで2024年9月22日、中村聡也撮影

 多国間協力の再構築を掲げた国連の「未来サミット」は23日に2日間の日程を終えて閉幕する。初日に採択した一連の成果文書では、機能不全が指摘される安全保障理事会について「改革の緊急の必要性」を明記した。また、急速に進化するAI(人工知能)の影響やリスクを独立して評価する「国際科学パネル」を国連に新設する方針も盛り込まれた。

 採択された「未来のための協定」は、地球規模の課題や将来世代の利益のため、国際社会が対立や分断を乗り越えて協力を強化することを誓い、56項目の行動計画を示した。

 このうち安保理改革では、来年に発足80年を迎える国連創設時とは異なる国際社会の現実を反映し、理事国を拡大する必要性で一致。ただし実現の時期や常任理事国の議席を増やすかどうかには触れていない。

国連本部で開催された未来サミット=ニューヨークで2024年9月22日、中村聡也撮影

 また途上国の成長を妨げる債務問題への対応として、国際通貨基金(IMF)や世界銀行の改革を求め、2030年までの「持続可能な開発目標」(SDGs)の達成を軌道に乗せることを目指す。気候変動問題では、エネルギー部門で「化石燃料からの脱却」を目指すと明記し、従来の国際合意を踏襲した。宇宙の平和利用をめぐる協力の強化も盛り込んだ。

 関連文書の「グローバル・デジタル・コンパクト」では、デジタル技術をめぐる格差解消やAIの国際ガバナンス強化をうたった。各国の専門家を集めた「国際科学パネル」のほか、民間を含む利害関係者を巻き込んだ対話の枠組みを国連に新設し、AIの便益やリスクについての共通理解を進める。

 今年初めに本格化した成果文書をめぐる政府間交渉は難航した。22日の採決直前には、ロシアが北朝鮮やイランを巻き込んで内政不干渉の原則を強調する修正案を提示。提案は退けられたが、サミットが掲げる価値に分断の影を落とした。

 成果文書に拘束力はなく、「核兵器なき世界の実現」など展望の見えない目標も含まれる。採択を受け、グテレス事務総長は「多国間主義を危機から救うために私たちはここにいる」と訴え、合意から行動につなげることが「私たち共通の責任だ」と強調した。国連外交筋は「画期的とは言えない公約数的な内容だ。それでも合意できたことに意味がある」と評価する。

 米ニューヨークの国連本部では24日から各国の首脳らによる国連総会の一般討論演説が始まる。ウクライナのゼレンスキー大統領、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長ら紛争当事国・地域からも首脳が演説する。一般討論演説は30日まで。【ニューヨーク八田浩輔、中村聡也】

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