「全ての暴力・テロに反対する」「天国には暴力がないことを望む」
日本人学校に通学中の男児(10)が路上で刺されて命を失う痛ましい事件が起きた中国南部・広東省深圳市では19日、中国人の市民らが深圳日本人学校の正門前に次々とメッセージを添えた花束を置いていた。
中国では6月にも日本人母子が襲われて死者が出る事件が起きたばかり。警備は強化されていたが、事件の再発は防げなかった。
事件が起きた現場は日本人学校の正門まで約200メートルの路上。大きめの道路から学校前の細い道へと曲がる角、そして正門前の2カ所に警備員の詰め所が置かれている。
しかし、男児が襲撃されたのは、親と一緒に学校へ向かう大きめの道路上、カーブの手前で警備員からも見えにくい位置だった。目撃者によると、当時、あたりには母親とみられる女性の叫び声が響いたという。近くにいた警察関係者が駆けつけて容疑者を取り押さえたが、すでに男児は腹部に深い傷を負っていた。
学校は今週は休校になったが、一夜明けた19日も警察や警備会社による厳戒態勢が敷かれた。
19日午後、学校の正門に献花に訪れた男性会社員(44)は「私も子どもがいる。亡くなったと聞き、つらすぎる」と沈痛な面持ちで語った。花束を手にした50代の男性は「一人の中国人として恥ずかしい。良識のある中国人は皆この行動を非難し、憤慨している」と話した。日中の民間交流に与える影響を心配する中国人男性(61)は「大切な子どもの命を奪ってしまった。国も悲惨な事件が起きないようにしてほしい」と語った。
深圳日本人学校は事件を受け、警備会社や地元警察へ警備強化を要請したが、登下校中の子どもをいかに守るかという重い課題が突きつけられた。
中国各地の日本人学校は、登下校にスクールバスを利用する世帯のほか、近隣の家庭は個別に保護者が学校まで徒歩で送迎するケースもある。6月に東部・江蘇省蘇州市で日本人母子が襲われた事件はスクールバスを待っていたところを狙われた。
中国各地の日本人学校は対応に追われている。在中国日本大使館によると、北京市の北京日本人学校は警察当局に周辺の巡回強化などを改めて要請。スクールバスの乗降場所での安全確保を徹底するほか、保護者が徒歩で送迎している世帯には、タクシーや自家用車の利用を推奨したり、複数でまとまって下校したりするよう呼びかけているという。
林芳正官房長官は19日の記者会見で、日本人学校に徒歩で通学する場合の安全確保策について「外務省、文部科学省が中心となって可及的速やかに検討していきたい」と述べ、関係省庁で至急検討するとした。【深圳・岡崎英遠、北京・河津啓介、内田帆ノ佳】
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