開発中の大型ジェット機「C929」の模型=上海市で2024年7月6日、小倉祥徳撮影

 中国が国家ぐるみで現在開発中の大型国産ジェット機の名称から「R」の文字が消えた。背景には2022年のロシアによるウクライナ侵攻の影響、そして開発体制の変化があるようだ。

 23年5月に商業運航を開始した中型機「C919」などを開発・製造する中国商用飛機(COMAC)の本社がある上海市には、中国製飛行機開発の歴史をテーマにした博物館「上海航宇科普中心」がある。軍用機を含めたさまざまな機体を展示する館内を見学すると、子供たちが機体に色を塗って遊ぶコーナーの説明文で、ある機体名に1文字分のシールが張られているのが目についた。

上海の博物館で「C929」の説明文には1文字分が消されていた=2024年7月6日、小倉祥徳撮影

 設計段階で実現すれば座席数300人前後、米ボーイングのB787や欧州エアバスA350などのライバル機となる「C929」。シールで隠されていたのは「R」の文字だ。

 C929はCOMACとロシアの航空機会社が17年、合弁会社を設立し開発が本格化した。開発機は当初、両国の英語表記の頭文字を取って「CR929」と呼ばれていたが、23年夏ごろに名称が「C929」に突如変わった。博物館側も「色塗りコーナー」まで作り直すのは大変だったのだろう。

 名称変更に関して中国政府やCOMACの公式説明はないが、中国のネットメディアの報道によると、ロシアのウクライナ侵攻やそれに伴う西側の経済制裁の影響でロシア企業が合弁から抜け、事実上中国の単独開発になったとみられる。

 ロシア企業の撤退は開発スケジュールに影響を与えるのか。COMACの幹部は23年11月に開かれた顧客向け会議で「C929は初期設計を始め、大型機事業は産業化に向けた新たな段階に入った」と自信を見せる。

 COMACはこれに先立ち、C929より一回り小さいC919の単独開発に成功。エンジンや機体の制御システムなどは欧米の部品メーカーに依存しているものの、商業運航や量産計画は順調に進んでいる。こうしたことがロシア企業との合弁解消後も揺るがない自信につながっているようだ。

 もっとも、C929の初飛行や商業運航の開始時期は現時点では未定。中国国内では座席数400人の「C939」構想もうわさされているが、ボーイングやエアバスに完全に肩を並べるには、もう少し時間がかかりそうだ。【上海で小倉祥徳】

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