英国会議事堂=ロンドンで2024年7月24日、篠田航一撮影

 英国のスターマー労働党政権は、企業に対し週休3日制の導入を促す法案を作成し、10月にも議会に提出する。英メディアが伝えた。仕事と生活の調和を図る「ワークライフバランス」の充実が狙いだが、休みを取る人の代わりに別の人の負担が増えるといった「カバー態勢」の課題も指摘されるほか、休日が増えることでビジネスへの悪影響を懸念する声も上がっている。

 「労働者の権利の100年に一度のアップグレードだ」。スターマー首相は今回の案をそう評した。

スターマー英首相=ベルリンで2024年8月28日、ロイター

 英BBC放送によると、週休3日は強制ではなく、あくまで労働者側が望んだ場合に適用される仕組みになるという。1週間の合計の勤務時間は変えず、たとえばこれまで一日8時間で週5日、計40時間働いていた人が、一日10時間で週4日働くことで同じ40時間労働を確保できる。雇用主は従業員の希望に応える必要があるが、「正当な業務上の理由」があれば週休3日の要求を拒否することもできるという。

 「仕事量を変えず、家族と過ごす時間も増える」。労働党のスミス上院議員は英メディアにそう語り、意義を強調した。英国の労組連合体・労働組合会議(TUC)のノワク書記長も、「優れた雇用主は、フレキシブルな働き方が企業に与えるメリットを既に認識している」と述べ、法案を歓迎した。

夕暮れ時、飲食を楽しむロンドン市民=2023年9月23日、篠田航一撮影

 一方、野党の影の内閣で「影のビジネス貿易相」を務める保守党のホリンレーク下院議員はこの案について「企業を弱体化させる」と懸念を示している。

 英国では2022年6~12月、賃金を下げずに週休3日制を試行する実験的プログラムが実施され、建設、金融、広告など61企業・団体の計約2900人が参加した。英紙ガーディアンなどによると、このうち9割近い54社がプログラム終了後も週休3日制の継続を決め、大半の従業員が「私生活の充実」「仕事の効率アップ」などのメリットを感じたという。1割以上の従業員は「たとえお金をもらっても週5日労働には戻りたくない」と答えた。

 一方、制度が公平に適用されず、休む人の代わりに仕事の負担が増えてしまう人もいるため、週休3日制は「機能しない」と判断する企業もあった。週休3日制が一般的でない顧客や取引相手との間で意思疎通ができず、問題が生じたケースもあるという。【ロンドン篠田航一】

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