残すところ2カ月ほどとなったアメリカ大統領選挙。全米の世論調査の平均値では、民主党のカマラ・ハリス氏が共和党のドナルド・トランプ氏を1.8ポイント上回っている(リアル・クリア・ポリティクス調査)が、民主党とハリス氏にはリードしていても最後まで気が抜けない“ある懸念”がつきまとっている。
【映像】「トランプ支持」を隠す“意外な”心理とは?
バイデン大統領の撤退表明後に急遽公認候補となり、これまで順調に支持を伸ばしているハリス氏だが、今後もこの勢いは続くのか。国際公共政策が専門の早稲田大学・中林美恵子教授は「ここから支持率が変わる可能性も十分残っている」と分析する。
「ハリス氏が“どんな人か”を見極めようとしている人がまだアメリカにはたくさんいるようだ。特に無党派層はハリス氏をよく知らないと感じている人が多く、彼女のこれからの発言や失敗で支持率が変わる可能性も十分残っている」
また、中林教授は「トランプ氏が関わる選挙では世論調査の精度が低くなる傾向がある」と指摘。実際、2016年の大統領選では世論調査での支持率でヒラリー氏が大きくリードしていたものの、最終的にトランプ氏が勝利している。その時に話題になったのが“隠れトランプ”の存在。隠れトランプとは、世論調査などで自身が「トランプ(共和党)支持」と答えず、ひっそりと共和党に票を投じた支持者のことだ。
中林教授は「本人たちが隠れようとしているかどうかは別として、トランプ氏を支持する人たちが世論調査に正直に答えない可能性がある。加えて、まだハリスさんの人となりがよくわからないので見極めたいという人たちが、現在行われている世論調査で『一応ハリス氏かな』と思いつつも投票日までに意見を変える可能性もある」と指摘した。
また、全体の得票数ではなく各州の選挙人を獲得した方が勝利するというシステムも相まって、世論調査通りの結果にならない可能性もある。
更に今後、不確定要素の1つとなりそうなのが「副大統領候補」の存在だ。共和党副大統領候補のJ.D.バンス氏、民主党副大統領候補のウォルズ氏のそれぞれについて中林教授は「J.D.バンス氏はトランプ氏以上に保守的な発言をする方で、一方の民主党のウォルズ氏もハリス氏以上にリベラルではないかという指摘がされている。そのため、両陣営にとってかなり攻撃する要素を持っている存在だ」と分析している。
来週にはいよいよ、ハリス氏とトランプ氏によるテレビ討論会が行われる。中林教授は「ハリス氏は原稿を読むのは得意だがアドリブ力がないのではないかと言われており、まずその点が(テレビ討論会で)テストされる。ハリス氏は現職の副大統領として、移民問題、インフレ問題、ガザの問題、ウクライナの問題など様々な“攻撃材料”を抱えているが、上手く防御し、自分の主張へとつなげていけるかがポイントだ。一方でトランプ氏は攻撃力があるので、討論しながら“(自身が)高齢だというところが見えないようにする”ことが重要になるのではないか」と展望を予想している。
ノンフィクションライターの石戸諭氏は、ハリス氏とトランプ氏の対決について「(候補者が)バイデン大統領からハリス氏になったことで、今までのトランプ氏の攻撃的な姿勢が『やりすぎなのではないか』という見方にもなってくるだろう。“高齢・男性・高学歴”の三拍子だったバイデン大統領に対して、『俺のほうが若々しく、ちゃんとできるぜ』とアピールする戦法がとれなくなる。(トランプ氏の従来の戦い方が)逆にウィークポイントになる可能性も出てくるだろう」と私見を述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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