国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は27日、ウクライナ軍が越境攻撃を続けるロシア西部クルスク州にあるクルスク原発を視察した。グロッシ氏は「原発は外部からの衝撃に弱く、核事故が起こる可能性がある」と話し、周辺を攻撃しないよう警告した。露国営テレビが報じた。
グロッシ氏はクルスク原発が、1986年に事故を起こしたウクライナのチェルノブイリ原発と同型で、設計上、格納容器がないタイプの原発であることに言及。「炉心は普通の建物の中にあり、特別な防護がないため、砲撃やドローン攻撃に対して非常に脆弱(ぜいじゃく)だ」と指摘した。その上で、「炉心に何らかの衝撃が加えられた場合、核事故が起こり、放射能が放出されるだろう」と懸念を示した。
ただ、チェルノブイリ原発とクルスク原発をそのまま比較することは適切ではないとも話し、仮にクルスク原発で事故が起こった場合、「チェルノブイリ事故と同じ規模になるかどうかは分からない」と述べた。クルスク原発はウクライナ国境から約60キロに位置し、現在のところ、正常に稼働しているという。
ロイター通信によると、戦闘は原発から約40キロの地点でも起きている。
グロッシ氏の視察に先立ち、プーチン露大統領は22日、この日の未明にウクライナ軍がクルスク原発を攻撃しようとしたと主張。ロシアメディアによると、ロシア側は使用済み核燃料の貯蔵施設から100メートル離れた場所で墜落した無人機の破片が見つかったとして、IAEAに報告していた。
グロッシ氏はクルスク原発視察後、ウクライナに移動してゼレンスキー大統領と会談する。【モスクワ山衛守剛】
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