【ロンドン=黒瀬悦成】スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は22日、2023年の世界の軍事費支出(推計含む)が前年比6・8%増の2兆4430億ドル(約377兆7610億円)だったとする年次報告を発表した。9年連続の増加で、SIPRIが報告をまとめ始めた1988年以降で最高額を更新した。
ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢が支出増の要因とされ、09年以来15年ぶりに世界全域で支出が増加。特に欧州とアジア・オセアニア、中東で増加が目立ったとしている。
軍事費の支出が増えた上位5カ国は米国、中国、ロシア、インド、サウジアラビアで、5カ国合計で世界全体の61%を占めた。
米国は前年比2・3%増の9160億ドルで、北大西洋条約機構(NATO)加盟31カ国(23年当時)の合計1兆3410億ドルの68%を占めた。
ウクライナを侵略したロシアの脅威をにらみ軍備増強に力を入れる欧州のNATO加盟国の軍事費支出が加盟国全体に占める割合は28%で、過去10年間で最大となった。
一方、ロシアは前年比24%増の推計1090億ドル。ロシアがウクライナのクリミア半島を併合した14年比では57%増となった。23年の軍事費は政府支出の16%、国内総生産(GDP)の5・9%を占めた。
対するウクライナは前年比51%増の648億ドル。ウクライナは加えて、米国からの254億ドルを含む少なくとも350億ドルの軍事支援を外国から提供された。軍事費支出と軍事支援の合計額は、ロシアの軍事費支出の91%に相当する額に上ったことも分かった。
中国は推計2960億ドルで29年連続増加した。日本は前年比11%増の502億ドル。台湾も11%増の166億ドルで中国の脅威をにらんで周辺国・地域が防衛態勢を強化している実態が浮き彫りとなった。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。