インドのモディ首相は23日、ウクライナを訪れ、ゼレンスキー大統領と会談する。両国が1992年に国交を樹立して以来、インド首相の訪問は初めて。モディ氏は7月にロシアを訪れてプーチン大統領と会談しており、ウクライナ侵攻を巡って「中立的な立場」にあることを改めて強調する狙いがある。
インドはグローバルサウスの代弁者を自任し、途上国や新興国が侵攻の余波による食糧危機やエネルギー安全保障の問題に直面しているとして、対話や外交による早期停戦を求めてきた。モディ氏は訪問に先立ち、「ウクライナで続く紛争の平和的解決について、見解を共有するのを楽しみにしている」との声明を発表した。インド外務省によると、経済や貿易をはじめとする2国間関係全般についても協議する予定だ。
モディ氏はプーチン氏との会談で「解決策を戦場で見いだすことはできない」と対話の重要性を訴えた。しかし、ゼレンスキー氏は、モディ氏がプーチン氏と抱擁したことに反発し、「大きな失望であり、平和への努力に対する壊滅的な打撃だ」などとX(ツイッター)に投稿。米国務省の報道官も、インドとロシアの関係に懸念を表明した。
インドは近年、国境紛争を抱える中国に対抗するため、欧米諸国との関係を強化している。モディ氏は、昨年5月に広島で主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれた際にゼレンスキー氏と侵攻後初めて会談し、その後も対面や電話で協議を重ねてきた。
一方、伝統的な友好国であるロシアとの関係も、引き続き重視している。ロシアの侵略行為を直接的には非難せず、欧米の対露制裁によって値崩れしたロシア産原油も買い増ししてきた。6月にスイスで開かれたウクライナの和平案を協議する首脳級会合「世界平和サミット」には、モディ氏の代わりに外務省幹部が出席し、インドは共同声明にも加わらなかった。【ニューデリー川上珠実】
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