米民主党の全国大会は21日、中西部イリノイ州シカゴで3日目を迎え、11月の大統領選で党の副大統領候補となったウォルズ・ミネソタ州知事(60)が指名受諾演説を行った。
指摘される知名度不足を補うため、自身の経歴の紹介に多くの時間を割き、庶民派だと強調。「労働者が最優先される国をつくる」と述べ、選挙戦の結果を左右する激戦州の労働者層や中間層への浸透を図った。
ウォルズ氏は陸軍州兵、公立高校の教師、アメリカンフットボールのコーチという米国で好感される経歴を持つ。「コーチ・ウォルズ」という愛称も定着している。2007年から6期務めた連邦下院議員時代には中西部ミネソタ州の保守的な農村地域を地盤としていた。西部カリフォルニア州出身で、黒人とインド系の両親を持つ大統領候補のハリス副大統領(59)を補完する役割が期待されている。
ウォルズ氏は演説で、中西部ネブラスカ州の人口400人の町で生まれ、10代で軍に入隊したことや、父親が病気の治療費の借金を残して亡くなったことなどを紹介。軍人向けの援助を受けて大学を卒業し、高校の教師やアメフトのコーチだったことに触れ、「連邦議員になるきっかけを作ってくれたのは選手たちだった」と説明した。
さらに「40代の高校教師で小さい子供もいる。政治経験はゼロでお金もない。そんな私が赤色(共和党が優位)の選挙区から立候補した。だが公立学校の教師を甘く見てはいけない」と語ると、会場は一気に沸いた。
知事として中間層の減税などに取り組んだ実績も強調。トランプ氏が返り咲けば、「中間層の負担を増やし、社会保障も削減される。人工妊娠中絶も禁止されるだろう。これは自由を巡る選挙だ。我々は後戻りしない」と違いを鮮明にした。銃犯罪から子供を守ることが「未来に対する責任だ」とも述べた。
さらに妻と不妊治療に取り組み、生まれた娘に「ホープ(希望)」と名付けたことを明かし、人工妊娠中絶や生殖医療などに関する権利の重要性を訴えた。またハリス氏と共に「あなたが望む生活を送る自由のために戦う。選挙まで76日しかない」として、支持拡大への協力を呼びかけた。
演説後はロック歌手ニール・ヤングさんが低所得者の苦境を歌った「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」が流れる中、ウォルズ氏が妻や子供たちと一緒にあいさつし、盛り上がりは最高潮に達した。【シカゴ松井聡、秋山信一】
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