タイの下院は16日、新たな首相にタクシン元首相の次女で、最大与党「タイ貢献党」のペートンタン党首(37)を選んだ。タイ首相としては史上最年少となる。
14日に現職の首相だったセター氏が憲法裁判所の解職命令を受け、失職したことに伴う交代で、連立政権を担う親軍政党などが支持した。今後、タクシン氏の政治への関与が強まることになりそうだ。
下院(定数500)で首相指名の投票が行われ、ペートンタン氏が319人の賛成を得た。女性の首相は、タクシン氏の妹で2014年に失職したインラック氏以来となる。
セター氏は閣僚人事を巡り、倫理上の違反があったとして憲法裁に解職を命じられたが、わずか2日で同じ政党から後継者が選ばれた形だ。
憲法裁の判断には国軍など保守派の意向が影響したとされ、長年対立してきたタクシン氏をけん制する狙いがあったとみられる。ただ、下院では野党の国民党が最多議席を有しており、保守派が政権にとどまるためには、貢献党と連立を維持する必要があった。
各政党は23年5月の下院選で、それぞれの首相候補を選挙管理委員会に届け出ており、首相はこのリストから選ぶ必要がある。
貢献党はセター氏とペートンタン氏のほか、元法相のチャイカセム氏を挙げていた。当初は経験豊富なチャイカセム氏が有力とみられていたが、75歳で健康不安があり、ペートンタン氏しか候補者は残されていなかった。タクシン氏の意向も働いたとみられる。
ペートンタン氏と親軍政党などは15日、投票に先立って合同記者会見を開き、笑顔で写真撮影に応じるなど「和解」を演出した。今後の組閣を巡っても、政党間の駆け引きが行われているとみられる。
ペートンタン氏はホテル業界などで勤務し、23年の下院選から政治活動を本格化させた。巧みな演説で党の「顔」として活躍。選挙中に第2子を出産し、直後に病院で会見を開いたこともある。
選挙後に貢献党党首に就任してからは、主要産業の観光施策に力を入れてきた。ただ国会議員ではなく、政治経験は乏しい。
ペートンタン氏は16日、地元メディアの取材に対し、経験不足を認めながらも「いいチームがいればうまくいく」と前向きな姿勢を見せた。タクシン氏からは「最善を尽くすように」と助言を受けたという。【バンコク武内彩】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。