ウクライナのゼレンスキー大統領=英国で2024年7月18日、AP

 ロシア産天然ガスをドイツに輸送する海底パイプライン「ノルドストリーム」と「ノルドストリーム2」が2022年9月に爆破された事件を巡り、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は14日、ウクライナ当局による破壊計画をゼレンスキー大統領が一時承認していたと報じた。

 計画を知った米中央情報局(CIA)の要請で、ゼレンスキー氏は計画の中止を指示したが、ザルジニー軍総司令官(当時)は従わなかったという。

 WSJによると、破壊計画はロシアによるウクライナ侵攻開始後の22年5月、少数の軍と企業関係者が発案した。民間企業が費用を負担し、軍が実行する取り決めで、ザルジニー氏に報告された。

 当時、ノルドストリームは対露戦の正当な標的とされており、ゼレンスキー氏も当初、計画を承認した。その後、オランダの情報機関が計画を察知し、情報を伝えられたCIAが計画の中止を求めた。だが、ザルジニー氏は既に実行役は派遣され、安全確保のため、外部との連絡を断っていると説明したという。ザルジニー氏はWSJの取材に対し、計画への関与を否定している。

ウクライナ軍のザルジニー前総司令官=ロンドンで2024年7月22日、AP

 11年に稼働を開始したノルドストリームと、21年に完成したノルドストリーム2は、00年代以降のロシアとウクライナの関係悪化を背景に、ウクライナ経由でロシアと欧州を結ぶ従来のパイプラインを迂回(うかい)し、独露両国を直接結ぶルートとして建設された。

 ドイツのロシア依存の象徴ともみられており、WSJは破壊がもたらすウクライナの利益として、ウクライナを支援する欧州諸国に対するロシアの影響力を弱め、ロシアからウクライナを経由する従来のパイプラインの通過料金が増えることなどを挙げた。

 独メディアによると、独捜査当局は通信記録や破壊工作に使用されたヨットの指紋などから、熟練ダイバーら実行犯6人を割り出し、今年6月、ウクライナ人のダイビングインストラクターの男性(44)に逮捕状を出した。だが男性は7月上旬、滞在先のポーランドからウクライナへ逃れたとみられる。独当局は現在、他の5人の行方を追うとともに、ザルジニー氏らウクライナ軍高官の関与を捜査しているという。

 ゼレンスキー氏は今年2月、体制刷新を理由にザルジニー氏を解任し、その後、駐英大使に任命した。【ブリュッセル宮川裕章】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。