「家族が背負う政治的運命をはねのけられるか?」――。タイで16日、新首相に選出されたタクシン元首相の次女、ペートンタン氏(37)について、地元メディアでは、こうした報道が目立つ。背景にあるのは、タイの「華麗なる政治一族」として知られるタクシン氏ら家族がたどってきた失脚の歴史だ。
タクシン氏は2001年に第23代首相に就任し、1回30バーツ(約120円)という低額医療制度などを導入したことで、農村部の低所得者層らから絶大な支持を得た。一方、軍や官僚などの既得権益層と対立し、06年の軍事クーデターで失脚。23年8月に帰国するまで、長きにわたり国外で逃亡生活を続けた。
タクシン氏の亡命後、義弟にあたるソムチャイ氏は、タクシン派の流れをくむ党の代表代行となり、08年に第26代首相となった。だが、憲法裁判所は党が選挙違反をしたとして、解党命令を出した。そのため、約2カ月半で首相の座を降りることになった。
タクシン派が復権したのは11年だ。妹のインラック氏は女性初の首相となったが、憲法裁は14年、政府高官人事に不当介入したとして解職を命じた。その後、軍事クーデターが起き、インラック氏は事実上の亡命生活を続けている。
ペートンタン氏は、根強い「反タクシン派」の活動や、家族の政治的運命を目の当たりにしながらも、自ら政治の道に進んだとされる。
ホテル業界で働いた後、タクシン派の政治活動に関与。23年5月の下院総選挙では、第2子の出産を控えながらイベントに登場し、選挙活動を率いた。だが、国会議員などの経験はない。
地元メディアは、ペートンタン氏が「批判に辛抱強く耐えていることが、評価されている」とする一方、「運命の呪縛を解けるかに注目が集まっている」と報じている。【バンコク石山絵歩】
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