バイデン米政権は15日、連邦政府が提供する公的医療保険「メディケア」で10品目の薬価を2026年に引き下げると発表した。患者の自己負担が小さくなり、支払総額は1年間で15億ドル(約2200億円)減る見通しという。11月の大統領選で物価高(インフレ)が争点となる中、生活コストを抑える具体策として有権者にアピールする。
「全ての高齢者が安心し、尊厳を持って生活できるようになるべきだ。薬価が高いのは、製薬会社が利益のため価格をつり上げてきたからだ」。大統領選で民主党候補指名が確定しているカマラ・ハリス副大統領は15日、米東部メリーランド州で開いたイベントで、大手製薬を批判する一方で米国民の生活を守る姿勢を強調した。
政策を主導したバイデン大統領もハリス氏とともに演壇に立ち、この政策を盛り込んだ法案に反対した共和党を批判した。
ホワイトハウスによると、価格引き下げ対象になるのは糖尿病や心不全など高齢者の利用が多い薬で、定価に比べた下げ幅は38~79%。患者が自分で支払う薬代は計15億ドル減り、連邦政府が支出する公的負担は計60億ドル減る見通し。
メディケアは全米で6000万人以上の高齢者と障害者が加入する公的保険。バイデン政権は22年8月に成立させた「インフレ抑制法」で、薬価引き下げのため保健当局に大手製薬会社と価格交渉する権限を与えた。
製薬会社側は「経済的価値を反映した価格になっていない」などと反発したが、最終的に交渉した全社の同意を取り付けたという。保健当局は25、26年にもそれぞれ15品目ずつ価格引き下げ交渉をする。
多くの米国民がインフレに不満を募らせる中、生活に身近な薬価引き下げは、ハリス氏陣営にとって有権者への格好のアピール材料になる可能性がある。
イベントに来ていたメアリー・スピアーズさん(78)は「高い薬代は米国で大きな問題だ。私たち高齢者は、とても助かる」と話した。
共和党のドナルド・トランプ前大統領は15日、東部ニュージャージー州で開いた記者会見で「共産主義的な価格統制を提案している」と非難した。トランプ氏は、インフレはバイデン政権の失政が原因として政権中枢にいるハリス氏を批判している。【ワシントン大久保渉】
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