カラフルな刺しゅうの衣装で知られる中国の少数民族ミャオ族に伝わる昔話を日本画の技法で鮮やかに再現――。アジアの美人画を中心に手がけてきた日本画家、後藤仁さん(56)=千葉県松戸市=が製作した絵本「にじをかけたむすめ」がBL出版から発行された。構想から15年。アジアの文化交流と平和への願いを込めて出版にこぎつけた。
中国内陸部に住むミャオ族は文字を持たず、刺しゅうや舞踊などで民族の歴史や物語を伝えてきたとされる。
今回の絵本も世代を超えて民族に伝わる昔話を題材にしている。
刺しゅうの上手な娘が、王様に無理難題を課せられる物語。涙を流しながらほどこした鳥や竜の刺しゅうに命が宿り、大胆にストーリーが展開していく。空にかかる虹の由来を伝えている。文は中国語翻訳家の宝迫典子さんが手掛けた。
後藤さんにとって絵本は7作目。金箔(きんぱく)を貼ったり、和紙の裏側から色を付ける裏彩色(うらさいしき)の技法を使ったりと、丁寧な作風が魅力だ。ミャオ族の伝統衣装や住居、中国の風景などがリアルに再現されている。
後藤さんは「日本画は日本人になじみ深く、物語は中国らしくダイナミック。国や年齢を問わず楽しんでもらえると思う」と話す。
「日本と中国は政治的には厳しい状況が続いているけれど、文化の根元はつながっている。この絵本が将来的に友好の種となってくれたらうれしい」と願いを込めた。【山崎明子】
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