ノーベル平和賞を受賞した経済学者のムハマド・ユヌス博士=東京都内のホテルで2006年10月25日午後5時16分、小出洋平写す

 バングラデシュの反政府デモを主導した学生団体の代表は6日、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス博士(84)に、近く発足する暫定政権の首席顧問就任を求めた。ロイター通信によると、ユヌス氏側も応じる意向だ。AFP通信によると、ハシナ前首相を辞任に追い込んだ5日のデモでは少なくとも56人が死亡しており、治安の回復が焦点となっている。

 学生団体の代表は6日のビデオ声明で「軍部が主導する政府は承認しない」と表明し、ユヌス氏に暫定政権を率いるよう求めた。

 ユヌス氏は貧困者向けに低金利・無担保で少額を融資する金融機関「グラミン銀行」の創設者で、2006年にノーベル平和賞を受賞。政界進出を目指したがハシナ政権と対立し、今年1月に労働法違反事件で有罪判決を受けていた。

 一方、シャハブッディン大統領は5日夜、軍部代表者の同席の下、野党バングラデシュ民族主義党(BNP)をはじめとする政党代表らと協議し、速やかに暫定政権を樹立すると発表した。ハシナ氏から辞表の提出を受けて承認したとした上で、早期に総選挙を実施すると説明。暴力行為には「厳しい対応を取るように軍に求めた」と述べ、事態の沈静化を呼びかけた。6日には議会も解散した。

 シャハブッディン氏は、自宅で軟禁状態にあったBNP党首のジア元首相を釈放し、拘束された学生指導者らも釈放するとしている。

 5日のデモでは、数千人の市民が首相公邸を占拠したほか、政府関係者の自宅などに放火。ハシナ氏が国外へ脱出した後も一部で暴動は続いた。バングラは欧米や日本向けに低価格の「ファストファッション」を製造する世界有数の縫製品輸出国だが、ロイター通信によると、6日は縫製品の製造工場も閉鎖された。【ニューデリー川上珠実】

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