【ワシントン=大内清】イランからの直接攻撃を受けたイスラエルの反撃を巡り、バイデン米政権は同国のネタニヤフ首相に対して、軍事的緊張の激化を避けるよう暗に自制を促してきた。だが、パレスチナ自治区ガザに対する軍事作戦と同様、イスラエルの行動は一段と制御が困難となっている。
「グリーンライト(青信号)は出していない」。米CNNテレビは、イスラエルによるイラン反撃直後の米東部時間18日夜、バイデン政権高官の発言を伝えた。米国は反撃に賛同していなかったとのメッセージだ。
18日にはこれに先立って、米首都ワシントンで米・イスラエル両国の高官による戦略対話が開かれた。ホワイトハウスによると、両者はイスラエルの防空能力の向上に向けた連携強化などについて協議した。
米側代表のサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、対イラン制裁強化で先進7カ国(G7)の協調態勢を整えたことなどを説明したという。イスラエルが孤立感から極端な行動をとることがないように、米国側が腐心している様子がうかがえる。
米同盟国のイスラエルは伝統的に、米国が主導する中東秩序の維持と対イラン抑止の要と位置付けられてきた。
しかし、昨年10月以降のガザ戦闘では、ネタニヤフ氏をバイデン政権が持て余す場面が増えている。同氏の強硬姿勢が人道危機や民間被害を深刻化させているだけでなく、域内外の反イスラエル感情を高めて域内情勢を不安定化させかねない懸念があるためだ。
今回のイランとの応酬も、同国の在外公館に対するイスラエルによるとみられる空爆が直接の発端となった。19日の反撃は限定的な規模にとどまったものの、イスラエルとイランの双方がこれで矛を収めるかは不透明であり、バイデン政権にとっては手探りの外交が続く。
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