11月の米大統領選に向けて、民主党は5日、党候補指名に向けたオンライン投票を締め切った。女性初の大統領を目指すカマラ・ハリス副大統領(59)を正式に候補指名し、返り咲きを狙う共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)との対決が決まる。投票日まで残り3カ月。民主党の候補差し替えで選挙戦は仕切り直しとなり、新たな構図で論戦が本格化する。
ハリス氏は、各州などの代議員ら計約4700人によるオンライン投票(1~5日)で信任を得た。党候補指名争いで圧勝していたジョー・バイデン大統領(81)が7月、高齢による衰えへの懸念の高まりを受け、出馬を断念。選挙直前での党内の混乱を回避するため、バイデン氏が推薦し、法的に陣営の選挙資金を引き継ぐのが可能だったハリス氏に支持が集まった。
ハリス氏は5日、X(ツイッター)への投稿で、トランプ氏を念頭に「憲法の停止に言及するような人物が、大統領になることがあってはならない」と強調。「自由のための闘いに参加してほしい」と呼びかけた。6日までに副大統領候補を発表し、今週の接戦7州での遊説を皮切りに選挙運動を本格化させる。
2大政党の候補が予備選を経ずに決まるのは近年では例がなく、トランプ氏は「クーデターによって非民主的に決まった候補だ」と批判した。
民主党の候補差し替えで情勢は一変した。政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の各種世論調査の集計によると、5日時点の支持率はハリス氏44・7%、トランプ氏44・3%。バイデン氏が撤退を決める直前にあったトランプ氏のリード(4・2ポイント)は消えた。勝敗のカギを握る接戦州の大半でも互角で、調査によってはハリス氏がリードを奪っている州もある。
高齢のバイデン氏を担ぐことに停滞感があった民主党は、「黒人女性初」「アジア系初」の大統領を目指す歴史的挑戦に活気づいている。「高齢対決」に失望していた有権者にも歓迎された。ただ、これまで副大統領としての評価は低く、支持率の上昇は一過性だとの見方もある。
政策面では、副大統領として支えたバイデン政権の路線を踏襲する。トランプ氏を「民主主義の脅威」と位置づけ、人工妊娠中絶を選ぶ権利の擁護も強調する戦略だ。
トランプ陣営は、国境管理の混乱、物価高(インフレ)、国際的威信の低下など、バイデン氏への批判材料をそのままハリス氏に向けている。米国では景気後退の懸念が高まっており、有権者の最大の関心事である経済政策でも「バイデン政権の失政」を訴える構えだ。
一方、相手がハリス氏に代わったことで、人種やジェンダーを巡る問題発言が従来より批判されやすくなっており、トランプ陣営は神経をとがらせている。
選挙戦のヤマ場になる候補者討論会は9月上旬に想定されるが、日程や主催テレビ局を巡る意見の相違があり、開催のメドが立っていない。
大統領選は11月5日に投票日を迎える。早い州では9月から期日前投票が始まる。弁護士のロバート・ケネディ・ジュニア氏(70)が無所属での出馬を目指し、環境政党「緑の党」も候補者を擁立する予定だ。【ワシントン秋山信一】
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