バイデン大統領=ロイター

 パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスの最高指導者ハニヤ氏が滞在先のイランで暗殺されたことを巡り、バイデン米大統領が暗殺に関わったとみられるイスラエルのネタニヤフ首相に不満を募らせている模様だ。仲介してきたイスラエルとハマスとの停戦案の合意の障害になりかねないためで、イスラエル側に自制を求めている。

 米ニュースサイト「アクシオス」によると、バイデン氏は1日にネタニヤフ氏と電話協議した際、想定されるイラン側からの攻撃に対する防衛支援を伝える一方、イスラエルがその後再び緊張を高める行動を取った場合には、米国の支援を期待しないよう警告。停戦合意に向けて早急に取り組むよう求めた。

 バイデン氏は5月に人質の解放などを含む包括的な停戦案を発表し、イスラエルとハマスの合意に向けてカタールやエジプトと仲介に取り組んできた。11月の大統領選への出馬を断念したバイデン氏は、来年1月までの任期中に停戦と人質の解放を実現し、「レガシー(遺産)」としたい意向も透ける。

 ネタニヤフ氏は暗殺事件前の7月下旬にホワイトハウスでバイデン氏と会談し、停戦について協議していた。アクシオスは関係者の話として、バイデン氏が1日の電話協議でネタニヤフ氏に対して、「会談で停戦合意について話したにもかかわらず、暗殺に踏み切った」と不満を示したという。

 ネタニヤフ氏を巡っては自身の政治的な保身のために、戦闘を続けているとの見方が根強くある。バイデン氏は1日に記者団に、「(ハニヤ氏の暗殺は)停戦交渉の役には立たない」と述べ、いらだちを隠さなかった。

 一方で、バイデン政権は現状では、イスラエルの防衛に関与する姿勢を変えていない。イランやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラからの「報復」が懸念される中、米国防総省は2日、中東に艦艇や戦闘機を追加で派遣すると発表した。弾道ミサイルの迎撃能力を持つ巡洋艦や駆逐艦を追加配備し、戦闘機部隊も追加で派遣する。また、空母「セオドア・ルーズベルト」に代わって、空母「エーブラハム・リンカーン」の派遣も決めた。【ワシントン松井聡】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。