国民総ダイエットで「肥満大国」脱却へ――。成人の半数以上が「肥満」もしくは「過体重」という中国で、国民の体重を適正にする全国キャンペーンが始まった。国を挙げて国民の体重管理に取り組むことで、糖尿病など生活習慣病の増加を防ぐ狙いだ。
「肥満の問題を改善するには緊急の介入が必要だ」。中国の保健当局である国家衛生健康委員会の責任者は6月下旬、記者会見でこのように危機感を示したうえで、教育省や民政省、国家体育総局など16部門合同で3カ年の「体重管理年」キャンペーンを実施すると発表した。
キャンペーンでは、学校や企業、ホテルなどに体重計を設置して意識向上を図るほか、各地に「健康テーマパーク」や「健康食堂」などを開設して肥満解消に向けた環境整備を行うという。体重の変化などを記録する体重管理アプリなども新たに開発し、これらのデータを体形的に管理分析する体制も整える。
また学校内では、糖分や脂質の多い食品の販売を控えるほか、毎日、学内外で各1時間、身体を動かす時間を設けて、未成年者の生活習慣病の予防を行うという。
中国では急速な経済発展や食習慣の変化などに伴う肥満人口の増加が社会問題化している。中国政府が公表したデータによると、肥満度を示すBMI(体格指数)などを基準に「肥満」や肥満の前段階とされる「過体重」に分類された成人(18歳以上)の割合は2002年の29・9%から20年には50・7%と急増。国際糖尿病連合の21年の報告によると、肥満との関連性の高い糖尿病患者数も、1億4100万人と世界最多となっている。
中国国内の研究では30年までに中国の成人の「肥満」もしくは「過体重」の割合は65・3%まで上昇。またそれに伴い肥満と関連のある医療費も4180億元(8・6兆円)に達し、医療費全体の22%を占めるとも指摘されている。
22年から人口減少社会に突入した中国では、少子高齢化による社会保障費の増加も懸念されており、中国としては、国を挙げて国民の肥満解消に取り組むことで、少しでも医療費の負担を抑制したい考えだ。【北京・岡崎英遠】
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