韓国の進歩系野党「祖国革新党」の曺国(チョグク)代表(59)が毎日新聞のインタビューに応じ、日韓の文化交流の重要性を強調する一方で、尹錫悦(ユンソンニョル)政権が進める日米韓の安全保障協力強化を含む対日政策については「到底、同意できない」と批判した。インタビューは2日にソウル市内で行われた。
核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮に対処するため日米韓の連携を重視する尹政権の姿勢は、韓国国内でも一定の評価を得ているが、曺氏のような進歩派のリーダーからは継続して非難の的だ。
曺氏は文在寅(ムンジェイン)前大統領の側近で、娘の大学不正入学問題などで非難を浴びたが、3月に結党した祖国革新党は4月の国会議員選(定数300)で12議席を獲得。韓国政界や世論形成に一定の影響力を維持している。
曺氏は日韓関係について、韓国の女性5人組グループ「NewJeans」のメンバーが松田聖子さんの「青い珊瑚礁(さんごしょう)」をコンサートで歌ったことなど、日韓の文化交流を挙げ「善隣友好関係を維持し続けることが両国の発展につながる」と述べた。
一方で、日米韓の防衛相が7月29日に安保協力の制度化に関して合意した覚書を挙げ「準軍事同盟であり、政治、軍事的に非常に危険な選択だ」と批判。日本による植民地支配などの歴史を挙げ、国民感情として受け入れられないとの認識を示した。
また、「米日との良好な関係は必要だが、北朝鮮の突発的行動を防ぐためにも(北朝鮮に影響力がある)中国やロシアとも良い関係を維持すべきだ」と訴えた。ロシアによるウクライナ侵攻後、韓国政府はウクライナ支援を積極的に進める一方、ロシアとの関係は悪化しており、こうした尹政権の方針にも疑問を呈した形だ。
韓国国会では与野党対立が激化。野党は尹氏の妻、金建希(キムゴンヒ)氏が企業の株価操作に関与したとの疑惑など、尹政権の「スキャンダル」を捜査する「特別検察官」を任命する法案を繰り返し可決し、そのたびに尹氏が拒否権を行使する状況が続いている。
曺氏は「歴代政権で最悪水準の拒否権の乱用であり、国会の無視だ」と反発。「大統領の弾劾を進めるべきだ」と訴えた。ただ、国会で弾劾訴追案を可決するには3分の2以上の賛成が必要となるが、野党勢力の議席は3分の2に満たない。曺氏は、いずれ与党からの造反が出て要件を満たす局面が来るとの認識を示した。
曺氏は、娘の不正入学に関連した偽造私文書行使などの罪で2審で懲役2年の実刑判決を受け、最高裁に上告中だ。妻は同様の罪で懲役4年の実刑判決が確定した。これについて曺氏は「国民に対して数十回にわたり謝罪したが、これからも謝罪し続けていく」と述べた。【ソウル福岡静哉、日下部元美】
曺国(チョ・グク)氏
1965年、釜山生まれ。ソウル大大学院と米カリフォルニア大バークリー校で法学博士号を取得。ソウル大教授を経て文在寅政権で大統領府民情首席秘書官、法相を務めた。2024年3月、祖国革新党を結党し、代表に就任した。娘の不正入学に関連した偽造私文書行使などの罪で2審で懲役2年の実刑判決を受け、最高裁に上告中。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。