米国の保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」は30日、他の保守系組織と連携した包括的な政策提言「プロジェクト2025」の責任者が退任し、近くプロジェクトを終了すると明らかにした。人工妊娠中絶の規制強化など提言内容は保守色が強く、民主党はトランプ前大統領(共和党)と結びつけて批判材料に利用。11月の大統領選への悪影響を懸念するトランプ氏が「我々とは無関係だ」と不快感を示し、陣営もプロジェクトに関われば「高官ポストに起用しない」と圧力をかけていた。
ヘリテージ財団のロバーツ会長は30日の声明で「2022年4月にプロジェクトを開始した時の予定通り、2大政党が党全国大会を終えた後に政策の提案を終える」と説明。8月19~22日の民主党全国大会後にプロジェクトを事実上停止すると明らかにした。米メディアによると、トランプ氏の陣営は最近、「プロジェクトに関われば、第2次トランプ政権(の政治任用ポスト)から排除される」と警告していた。
提言には、連邦レベルでの中絶規制強化、低所得者向け医療扶助制度の縮小など、無党派層や中道層に不人気な政策が盛り込まれている。提言者グループにはトランプ前政権の当局者が多く含まれていたことから、民主党は「トランプ氏が大統領になれば、中絶を選ぶ権利がさらに奪われ、医療扶助も削減される」などと批判していた。
トランプ氏の陣営は30日の声明で「プロジェクト2025は陣営とは全く関係がない。プロジェクト停止の判断は、トランプ氏に影響があるかのように見せようとする他の団体への警告になる」と述べた。
共和党の大統領候補は、保守層の支持が必要な党候補指名争いでは保守色を強く打ち出すが、民主党候補と中道層を争奪する本選では軌道修正する傾向が強い。トランプ氏も中絶や医療・年金制度を巡って、保守派と距離を置く姿勢を見せている。【ワシントン秋山信一】
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