毎日新聞などの取材を受ける、韓国大統領府の張商允・社会首席秘書官=ソウルで2024年7月29日、韓国大統領府提供

 韓国の最大の社会課題である少子化問題を巡り、韓国大統領府の張商允(チャン・サンユン)社会首席秘書官は30日までに毎日新聞などの取材に応じ、少子高齢化対策や移民など人口問題に関する司令塔として近く新設する「人口戦略企画省」について、副首相級をトップとし、戦略企画や予算編成で他省庁もコントロールできる「非常に強力な実行力を備えた省庁とする」と明かした。

 張氏は「これまで、努力すべきタイミングの多くを逃した。今後約10年が最後のチャンスだ」とも述べた。大統領府の社会首席秘書官は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の側近として社会福祉や医療、教育などを担当する。

 韓国は急激に少子化が進み、2000年には1・48だった合計特殊出生率は、23年に0・72まで急落。年間出生数は1970年の約100万人から4分の1にまで減った。これらの事態を受け、尹氏は6月中旬に「国家非常事態だ」と宣言。少子化、高齢社会、移民などの人口に関わる政策を統括する「人口戦略企画省」を新設すると発表していた。

 韓国の少子高齢化対策はこれまで、少子高齢社会委員会が各省庁から政策を集めて作った基本計画を5年ごとに点検してきた。しかし、少子化のスピードの速さから5年ごとの修正では間に合わなくなり、新設の人口戦略企画省が「(各省庁の)事業の進行具合や政策の効果を常時点検し、評価する」形を取るという。

毎日新聞などの取材を受ける、韓国大統領府の張商允・社会首席秘書官=ソウルで2024年7月29日、韓国大統領府提供

 また、少子高齢社会委員会は独自の予算案を作る権限がなかった。人口戦略企画省は他省庁と調整しながら関連予算案作成に直接関わり、この予算案は韓国企画財政省(財務省)が原則、全面的に最終予算に反映することになるという。

 また、張氏は日本との関係について、「高齢化や少子化問題を先に経験したことから、政策をする際に一番参考にしている国だ」と言及。「文化的な違いなどもあり、すべて韓国に適用できるわけではないが、日本政府当局と更に意思疎通を緊密にし、お互いの経験や対策を議論したい。韓国の政策例が日本に役立つこともあると思う」と協力に意欲を示した。

 一方、教育省次官出身でもある張氏は、受験競争の激化に伴う教育費負担が少子化の背景の一つと指摘される問題などに関連して、「1位をとれなければ失敗するといった過度な競争圧力を減らし、個人に合った多様な教育を選び取れるようにしなければならない」と指摘。過熱する教育投資を減らすための幼児・初等教育改革や大学入試改革を行い、「(私教育から公教育に重心を移す)パブリックケア中心」に変えていくべきだとした。【ソウル日下部元美】

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