国際労働機関(ILO)は25日に発表した報告書で、日本を含むアジア太平洋地域では、世界平均を上回る4人に3人の労働者が過度な暑さにさらされていると指摘した。暑さによる労働災害を防ぐための安全衛生対策を改善することで、世界全体で最大3610億ドル(約55兆5220億円)の逸失利益を回避できると試算した。
報告書は、仕事中の過酷な熱さが身体に与える影響として、時に死に至る熱中症のほか、心臓や腎臓などの持病が重症化する可能性があると指摘。自覚症状がないまま命を脅かす「サイレントキラー」(静かな殺し屋)だと表現した。
また、2020年時点で世界の就労人口の7割にあたる24億人超が酷暑の中で働き、年1万8970人の労働者が暑さに関連して死亡していると推定。気候変動の影響で、業務中に熱波にさらされる労働者の数は20年前から66%増加したという。地域別では米州や欧州、中央アジアの比較的涼しかった地域で暑さに伴う労働災害が急増していた。
ウングボ事務局長は職場の暑さ対策は「人権問題」だと強調した上で、「年間を通じて世界中の労働者に前例のない困難をもたらしている」として対策の加速を訴えた。【ニューヨーク八田浩輔】
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