フランスのマクロン大統領は23日、パリ・オリンピックが閉幕する8月中旬まで新首相を指名せず、現行の内閣を暫定的に維持する方針を発表した。仏国営テレビ「フランス2」のインタビューで明らかにした。7月7日の国民議会(下院、定数577)選挙の決選投票で、主要なグループのいずれも過半数に届かず、首相候補の選定が難航している。
マクロン氏は同テレビで「8月中旬までは五輪に集中しなければならない。混乱が生じる可能性があり、物事を変えられる状況にない」と説明した。また、2027年までの大統領任期中に自身が辞任する可能性を否定した。
国民議会選の決選投票では、社会党、共産党、急進左派「不服従のフランス」(LFI)などで構成する左派連合「新人民戦線」が182議席、中道の与党連合が168議席、極右政党の国民連合が143議席を獲得したが、どのグループも過半数に達しなかった。
フランスでは大統領が首相を指名する。議会の不信任案で政治が停滞するのを避けるため、法的義務はないものの、最大グループから首相を指名するのが慣例となっている。
しかし今回、最多議席の左派連合はLFIと連合内他党の対立などで首相候補の選定が難航。23日になって、マクロン氏のテレビ出演の直前に、ほぼ無名で政治経験のないパリ市幹部の女性、リュシー・カステ氏(37)を統一候補にすると発表した。
一方、仏メディアによると、マクロン氏は中道の与党連合を中心に、右派・共和党や、LFIを除く左派連合の一部を取り込んだ連立内閣を望んでいるとされる。マクロン氏は23日のテレビ出演で、カステ氏の首相指名について問われ、「問題はそこではない。左派連合は過半数の議席を獲得していない」と強調した。
18日に招集された国民議会では、与党連合のヤエル・ブロンピベ氏の議長再選が決まった。共和党の協力を得て、左派連合の共産党候補を僅差で制した。与党連合と共和党の協力が実現したことから、仏メディアでは中道を中心とした内閣発足の可能性が強まったとの見方が出ている。【ブリュッセル宮川裕章】
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