バイデン米大統領(左)とハリス副大統領=2024年1月23日、秋山信一撮影

 バイデン米大統領(民主党)が11月の大統領選での再選を断念したことを受けて、民主党内からは決断を評価し、後継に指名されたハリス副大統領を支持する声が相次いだ。ただ、党の有力者にはハリス氏への支持表明を控える動きもあり、大統領候補を巡る党内の路線対立が今後表面化する可能性もある。

 「前例のない(新型コロナウイルスの)パンデミックから米国を引き上げ、多くの雇用を創出し、経済を立て直した」。ビル・クリントン元大統領とヒラリー・クリントン元国務長官の夫妻は21日の声明で、バイデン氏をたたえた。

 米メディアによると、2人は「バイデン降ろし」が強まる中でも最後までバイデン氏を支援していた。「『第2次トランプ政権』の脅威を何よりも心配している。ハリス氏の当選のためにできることを全てやって戦う時だ」と党内に結束を呼びかけた。

 民主党の混乱が共和党のトランプ前大統領を利するとの懸念から、早期の事態収拾を図る動きは一気に広がった。米メディアによると、バイデン氏の選挙戦撤退表明から数時間以内に、民主党系の連邦上院議員51人のうち17人、下院議員213人のうち100人前後がハリス氏への支持を表明。「ポスト・バイデン」の有力候補とみられていた西部カリフォルニア州のニューサム知事やブティジェッジ運輸長官も支持を明確化した。

 ただ、バイデン氏による「後継指名」に拘束力はなく、ハリス氏への一本化が円滑に進む保証はない。

 党内で人気が根強いオバマ元大統領は「次の候補にバトンを渡すべきだと判断することは、人生で最もタフな決断だったはずだ」とバイデン氏を評価したが、今後の党候補選びについては「党のリーダーが候補指名のプロセスを考え、すばらしい候補が出てくると信じている」と述べるにとどめた。

 連邦議会で影響力を持つペロシ元下院議長も「バイデン氏は米国史上最も結果を残した大統領で、常に国家を最優先に考える愛国者だ」とたたえたが、後継候補には言及しなかった。ペロシ氏は名乗りを上げた候補が争う「開かれたプロセス」を提唱していると報じられている。連邦議会で党を率いる上院のシューマー、下院のジェフリーズ両院内総務も、バイデン氏の出馬断念直後の声明では、ハリス氏への支持表明を避けた。

 党内で影響力が大きいオバマ、ペロシ両氏の言動の背景には、バイデン氏との「暗闘」もある。米メディアによると、バイデン氏が6月のテレビ討論会で高齢不安を露呈した後、オバマ氏は「勝算が小さくなった」との見解を周囲に漏らし、ペロシ氏は水面下で「バイデン降ろし」に動いていた。バイデン氏も2人の言動に不信感を漏らしていたという。

 党内からはハリス氏に対抗する動きも出ている。米メディアによると、今年5月に離党して無所属になっていたマンチン上院議員が、復党して党候補指名争いに出馬することを検討している。【ワシントン秋山信一】

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