ジョー・バイデン氏=2023年1月26日、西田進一郎撮影

 米民主党のジョー・バイデン大統領(81)が21日、再選を目指す11月の大統領選からの撤退を表明した。X(旧ツイッター)に声明を投稿した。6月27日に実施された共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)とのテレビ討論会で言葉に詰まるなど精彩を欠き、高齢批判が高まっていた。

 民主党は速やかに後任候補の選定を進める方針だ。党内では、政権ナンバー2のハリス副大統領(59)を推す声が上がっている。副大統領候補からの「昇格」となり、バイデン陣営が集めた選挙資金や政策を引き継げるなどメリットが多い。またバイデン氏より20歳以上若く「世代交代」をアピールできる上、黒人票の取り込みも期待できる。

 ただバイデン氏以上に「不人気」との評価もあり、挙党態勢を演出するトランプ氏に対抗できるかは、未知数な部分もある。

 バイデン氏は6月までに実施された各州の予備選や党員集会のほとんどで圧勝し、党全国大会で投票する代議員約4000人の大半を確保していた。出馬の辞退に伴い、後継候補は、8月19~22日に中西部イリノイ州シカゴで開催する党大会で代議員による投票や話し合いで決定するか、8月初旬にオンラインで指名する形式が有力だ。

 仮に最初の投票でどの候補者も過半数の票を獲得できなければ、約700人の党幹部ら「特別代議員」にも投票権が与えられる。

 バイデン氏は討論会前の1週間、大統領専用の山荘で準備に専念するなど万全の態勢で臨んだ。だが終始かすれ声で、言葉に詰まる場面も目立った。気候変動対策の「パリ協定」を「パリ平和協定」と語るなどの言い間違えや事実と異なる発言が何度もあり、体力や認知機能の低下を懸念する声が高まった。

 バイデン氏は討論会後、風邪を引いていたと弁明し、選挙戦を継続する意思を強調。翌日以降、遊説やテレビでのインタビューを精力的にこなし、高齢不安の払拭(ふっしょく)を図っていた。

 だが、米CBSテレビが討論会後に有権者約1100人を対象に実施した世論調査の結果では、「バイデン氏は大統領選に出馬すべきではない」との回答が全体の72%に上り、有権者の間で高齢に対する不安が広がっていることが浮き彫りになった。

 政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の各種世論調査の集計(18日現在)によると、トランプ氏の支持率は43・1%で、バイデン氏(39・4%)やケネディ氏(8・5%)をリード。勝敗のカギを握る接戦7州では、いずれもトランプ氏がバイデン氏をリードしている。

 またニューヨーク・タイムズなどのメディアや、著名なコラムニストらもバイデン氏は選挙戦から撤退すべきだと主張。党内でも、大統領選だけでなく、同時に実施される上下両院の選挙への影響を懸念する声が高まった。

 これまでに下院を中心に連邦議員20人以上から公然と撤退を求める声が上がった。また当初はバイデン氏を擁護していたペロシ元下院議長や上院トップのシューマー議員ら党の有力者も、水面下で選挙戦継続への懸念を伝えたり、撤退を求めたりするようになった。

 国民に人気があり、党内で強い影響力を持つオバマ元大統領も周辺に「再選は難しくなっている」と語るなど外堀は徐々に埋まっていた。【ワシントン松井聡】

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