国際司法裁判所に入廷する裁判官たち=オランダのハーグで2024年7月19日、AP

 オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)は19日、イスラエルによるパレスチナ自治区ヨルダン川西岸や東エルサレムの占領は国際法違反だとして、できるだけ速やかに撤退すべきだとする勧告的意見を出した。イスラエルの占領を「事実上の併合」とも指摘し、新たな入植の停止なども求めた。

 勧告的意見に法的拘束力はないが、イスラエルによるガザ地区への攻撃で既に3万8000人以上のパレスチナ人が死亡しており、イスラエルはさらなる批判を浴びそうだ。

 ICJは、占領がパレスチナ人の「自決権」を侵害しているとも指摘。イスラエルの義務として、占領によって生じた損害の賠償なども要求した。イスラエル以外の国に対しては、占領地でのイスラエルの活動を支援しない義務があると述べている。

 ICJの判断に対して、イスラエルのネタニヤフ首相は「ユダヤ人は歴史的な土地において占領者ではない。いかなる不条理な意見も歴史的真実を否定することはできない」とX(ツイッター)に投稿し、ICJを非難。一方、パレスチナ自治政府のアッバス議長は勧告的意見を「正義の勝利だ」として歓迎した。

 今回の勧告的意見は、2022年12月の国連総会の本会議で賛成多数で採択された決議を受けて出された。審理は24年2月に始まり、パレスチナは占領の違法性を指摘していた。

 イスラエルは1967年の第3次中東戦争でヨルダン川西岸や東エルサレムなどを占領し、その後に入植地の建設を進めてきた。入植地の実態を調査するイスラエルの平和団体「ピースナウ」によると、72年時点で入植者は1500人だったが、22年には47万8600人にまで増加している。

 イスラエルは勧告的意見に強く反発しており、ICJの意見に従う可能性は低いとみられる。イスラエル外務省は「この地域の政治的解決は交渉によってのみ可能だ」とする従来の考えを表明。更にパレスチナに強硬的な立場を取る極右政党党首のベングビール国家治安相は「ICJは反ユダヤ組織だ。今こそ統治と主権の時だ」として、西岸などを併合すべきだと訴えた。【カイロ松岡大地】

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