タイ政府が打ち出した大麻規制の再強化に、推進派が反発している。首都バンコクでは抗議のハンガーストライキまで始まった。2年前の大麻解禁から政府方針が一転したとはいえ、使用容認にそこまでこだわるのはなぜか?
「セター首相が耳を傾けるまで続ける」
推進派団体のアッカラデ・チャクジンダさん(49)は、ハンスト突入から48時間がたった12日朝、こう力を込めた。バンコクの首相官邸近くにある橋のたもとにテントを張り、すでに1週間以上にわたって支援者らと道路を占拠する。フェンスを挟んで、警官隊が目を光らせていた。
推進派も参加する委員会を設置したうえで、全面禁止ではなく、規制法を整備することなどを求めている。禁止すれば「悪質業者が地下に潜り管理しにくくなる」と主張し、要求が通るまでハンストをやめるつもりはないという。
その口調は時折熱を帯びたが、周囲の雰囲気は穏やかだ。抗議集会がよく開かれる場所で、通行車両も慣れた様子で迂回(うかい)していく。各地の販売業者ら約20人がテントで寝泊まりし、持ち込まれた鉢植えの大麻草が風にそよいでいた。
タイでは2022年6月、大麻が麻薬リストから除外され、医療目的の使用が解禁された。ところが、20歳未満への販売や公共の場での吸引が横行し社会問題に。今月5日に保健省は、来年1月1日から麻薬として取り締まり、娯楽目的の使用を厳しく制限する方針を示した。麻薬統制委員会が近く是非を判断するとみられる。
だが、大麻産業は政府の想定を上回るスピードで広がっている。バンコクには1100店以上の大麻ショップがひしめく。乾燥大麻や大麻成分入りのグミなどを販売するキティ・ショーパカさん(38)は「ルールは必要だと思うが、ころころ変わる政府方針に小規模農家や個人経営者が振り回されている」と批判した。【バンコク武内彩】
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