2日前に銃撃を受けたばかりのアメリカ・トランプ前大統領。11月のアメリカ大統領選での返り咲きを目指し、共和党の全国大会に登場しました。健在ぶりをアピールしたトランプ氏には、いくつもの“追い風”が吹いているようです。

■トランプ氏 党大会に出席 銃撃事件後初 公の場

井上貴博キャスター:
アメリカ・ウィスコンシン州で7月15日から4日間、共和党全国大会が開催されています。
共和党の大統領候補として正式指名されたトランプ氏は、15日から支持者の前に登場しました。初日に党の大統領候補が姿を現すのは“異例”だということです。

■副大統領候補にバンス氏

そして、大きなニュースになったのは副大統領候補に指名されたJ・D・バンス上院議員(39歳)です。アメリカNPRによりますと、史上3番目に若い副大統領候補だといいます。

バンス上院議員は作家でもあり、2016年に産業が衰退した地域に住む白人労働者を描いた回顧録がベストセラーになり、その後、映画化もされたそうです。

2022年に上院選に出馬し、トランプ氏の支持を得て上院議員に当選しました。現在はトランプ氏の掲げる「アメリカ・ファースト」の政策を強く支持しているということです。

副大統領候補のバンス上院議員についてトランプ氏はSNSで「私がアメリカを再び偉大にするのを助けるため、彼はできることをすべてやるだろう(現地時間15日)」と投稿しています。

一方、バイデン大統領は「バンスは政策面でトランプのクローンだ。何の違いもない(現地時間15日)」と批判をしました。

ホラン千秋キャスター:
先日は銃撃事件もありました。アメリカはどのような空気感になっているのでしょうか。

上智大学 前嶋和弘教授:
銃撃事件について、国民はとてもショックを受けています。そしてバンス氏については、年齢は若いけれど、トランプ氏と政策が似ていることもあり、後継者というイメージのようです。

バンス氏は貧しい中から這い上がってビジネスマンとして成功しました。バンス氏の本にはトランプ氏の強い支持層である白人労働者階級の苦しみなどが描かれているので、共和党支持者の共感を得ることにつながりました。

ホランキャスター:
大統領がトランプ氏に、副大統領がバンス氏になった場合、どのようなことが予想されますか。

上智大学 前嶋教授:
バンス氏はトランプ氏の発言を少し大きめに言っている感じがします。例えば『ウクライナ支援の継続は反対』『日本製鉄によるアメリカ鉄鋼大手USスチール買収も反対』など、アメリカ第一主義でとても孤立的な動きになっています。

バンス氏はとても賢い人で、こう言ったらどう動くか全部わかっている上で、民主党にもわざと対立的なことを言うのです。トランプさんの有能な右腕かつ、猛犬というイメージです。

元競泳日本代表 松田丈志さん:
バンス氏は政治の経験が浅く、政治に染まっていないからこそ、新しい取り組みをどんどん行う人物だという報道もあります。

上智大学 前嶋教授:
おっしゃる通りです。バンス氏は上院議員になってまだ1年半です。以前はビジネスマンで作家でもあり、トランプ氏のようなアウトサイダーで新しいことをやってくれそうだという期待もあります。実際、上院議員になってから様々な政策を行っていて、とても目立つ存在です。

バンス氏は有能かつずる賢い。実は上院議員に出馬した当初はトランプ氏を否定していました。しかし予備選で負けそうなとき、トランプさんの応援で勝ったのです。自分の立ち位置を変えてでもどうしたら勝てるか、メリットがあるか分かっている人です、第2のトランプということになるのかもしれません。

■トランプ氏を“英雄視”か 米大統領選 事件の影響は

井上キャスター:
アメリカの情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、ブックメーカーの勝敗予想は、バイデン氏の言い間違いや、トランプ氏の銃撃事件を境にしてトランプ氏が優勢となっています。

また、トランプ氏を“英雄視”する動きもあり、共和党大会の参加者の中にはトランプ氏が銃撃後に拳を突き上げる写真がプリントされたTシャツを着ている方もいるということです。また「神の力」「神秘的」という声もあるなど、キリスト教保守派の方々がかなり神格化し、熱狂的になっているようです。

上智大学 前嶋教授:
国民の4分の1を占めるとされる保守的なキリスト教福音派の意向は選挙戦の行方を大きく左右します。福音派は一番の応援団です。キリスト教保守と政治の動きが一緒になるのは、日本から見ると驚くかもしれませんね。

ブックマークで今はトランプ氏が優勢になっていますが、今は共和党大会が開催され、支持者が一番集まっているので、ピークになっています。次は民主党大会があるので、いろんな形で競っていきながら、さてどうなっていくのだろうかと見ていくことになるのでしょう。

民主党はバイデン氏を指名するのか、ここ1、2週間がカギとなるでしょう。また副大統領候補はどうなるのか。そもそもアメリカは分断していますが、分断と拮抗、意外と並んでいくかもしれません。

========
<プロフィール>

前嶋和弘さん
上智大学教授 専門は現代アメリカ政治
中でも「メディア」「選挙」「「連邦議会」の関係を研究

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。