中国経済の前途にたれこめる暗雲を振り払えるか。中長期的な経済政策を議論する中国共産党の重要会議「第20期中央委員会第3回総会(3中全会)」が15日、北京市で始まった。
不動産不況や個人消費の低迷が長期化する中、習近平指導部が市場や企業、消費者の成長期待を高める処方箋を打ち出せるかが注目される。閉会日の18日に決定内容をまとめたコミュニケ(公報)が発表される予定だ。
中央委員会は、5年に1度の党大会と並ぶ党の最高指導機関。「3中全会」は党大会後、3回目の総会(中国語は全体会議)を意味する。中国にとってこの会議は特別な意味を持つ。1978年の第11期3中全会において、市場経済化を進め、外資に門戸を開く「改革・開放路線」の導入が決まり、それが「奇跡」と称された経済発展の出発点となったからだ。
そして今、高度成長は終わりを迎え、人口減少や貧富の格差など構造的な課題が深刻さを増す。民間企業の萎縮や外資の中国離れ、消費の低迷など強権統治の副作用が無視できなくなっている。慣例では2023年秋に開かれるとみられていた3中全会の開催が1年近く遅れた背景には、経済政策を巡る党内の意見集約に時間を要したとの見方がある。今回の会議が国内外の関心を集めるのは、中国経済が重大な転換点にあるからだ。
こうした状況の中、習国家主席(共産党総書記)は昨秋以降、最先端技術・産業の振興を強化し、イノベーションを通じて成長を底上げする「新質生産力」を掲げており、3中全会では景気停滞から脱却するための「改革」の方向性が示されるとみられる。また、巨額の地方政府債務が経済リスクになりかねなくなっており、消費税収の地方への配分を手厚くする案などが示される可能性がある。
ただ、具体的な不動産不況対策や消費喚起策が示されるかは微妙だ。消費の底上げには社会保障の拡大も必要だが、債務削減に逆行する。習氏は、格差是正を意味する「共同富裕」のスローガンも掲げているが、これは逆に好業績の民間企業の活力低下を招いており、雇用や所得環境を逆に悪化させかねない。
3中全会に先立つ党政治局会議では「政府と市場」「活力と秩序」「発展と安全」の整合性を図る重要性が強調されている。
一方、3中全会では経済に加え、政治方針や人事も議題になるとみられる。既に公表された李尚福前国防相と魏鳳和元国防相の党籍剥奪処分が追認される見込みであるほか、1年前に突然解任された秦剛前外相の処遇について何らかの結論が出るかどうかも注目される。【北京・小倉祥徳、河津啓介】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。