米東部ペンシルベニア州バトラーで13日に起きた共和党のトランプ前大統領の銃撃事件を受けて、米政界では党派を超えて「政治的暴力」を非難する声が上がった。
「トランプ氏の集会は平和的に行われるべきだった。誰もが政治的暴力を非難している」。11月の大統領選でトランプ氏と対決する予定のバイデン大統領(民主党)は、事件後の演説でこう強調した。普段は舌戦を繰り広げるトランプ氏や家族を気遣い、13日夜にはトランプ氏に電話もかけた。
歴代大統領も「トランプ氏の負傷が深刻ではなくて、ほっとした。政治における礼節と敬意を再確認する契機にすべきだ」(民主党のオバマ元大統領)、「卑劣な攻撃を受けたトランプ氏の命が無事でよかった」(共和党のブッシュ<子>元大統領)と相次いで声明を出した。妻ヒラリー氏が2016年大統領選でトランプ氏と対決した民主党のクリントン元大統領も「ヒラリーと私は、被害に遭った全ての人を思って心を痛めている」と気遣った。
トランプ氏の在任中に激しく対立した民主党のペロシ元下院議長は「トランプ氏の命が無事で神に感謝する」と述べた。夫が22年に自宅で暴漢に襲われる事件があっただけに「被害者の家族として、どんな政治的暴力も米社会では容認されないとよく分かっている」と強調した。
17年に銃撃された経験のある共和党下院ナンバー2のスカリス院内総務も「トランプ氏は私の事件の時に、真っ先にお見舞いしてくれた一人だ。今夜は彼と犠牲者のために祈る」と語った。
共和党の反トランプ派からも、事件を非難する声が上がった。今回の大統領選でトランプ氏と共和党候補指名を最後まで争ったヘイリー元国連大使は「全ての自由を愛する米国民が恐怖を感じた。大統領候補に対する暴力は決して常態化してはならない」と主張。ペンス前副大統領も「全ての米国民にトランプ氏のために祈るよう呼びかけたい」と述べた。
一方、共和党のジョンソン下院議長は「下院は、今日の悲劇的な事件を全面的に調査する」と強調した。大統領警護隊(シークレットサービス)の警備態勢が不十分だったとの指摘も出ており、「大統領警護隊などの当局者に、できるだけ早く委員会の公聴会に来てもらう」との考えを示している。【ワシントン秋山信一、大久保渉】
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