大統領選挙まで半年を切って湧きあがったバイデン大統領の“高齢不安”。民主党内から大統領選撤退を促す声が日々高まるが、バイデン氏本人に退く気はさらさらないように見える。
しかし先だって行われたNATO首脳会議のクライマックスで、壇上ゼレンスキー大統領をこともあろうに“プーチン大統領”と紹介してしまったバイデン大統領。いよいよ抜き差しならない状況になってきた…。
バイデン氏は“老いの一徹”
もしもバイデン大統領が大統領選から撤退したとしたら、民主党の大統領候補に一番近いのはハリス副大統領だ。彼女については毀誉褒貶、評判はまちまちだが記者からハリス氏が候補になった場合懸念はないのか問われたバイデン大統領は、あり得ない答弁をしてしまった。
バイデン大統領:
「もしトランプ副大統領が大統領に不適格だと思っていたら副大統領に選んでいない」
言い間違えもここまでくると笑うしかない。
トランプ氏は即座にSNSで“Great job, Joe(バイデン、よくやった)”と発信した。
思えば4年前、バイデン氏は自らの年齢を引き合いに出し次の世代への架け橋として大統領選に立った。つまり1期やったあとは後進に託すはずだった。
このことを問われたバイデン氏は取り巻く世界情勢が変わったと説明したが、変わったのはバイデン氏の方だと言うのは笹川平和財団の渡部氏だ。
笹川平和財団 渡部恒雄 上席フェロー:
「日本語では“老いの一徹”という言葉がありますが、歳とってどんどん頑固になった…。変わったのは自分で…“あなたは前よりのフレキシブルじゃなくなったんじゃないですか?”って感じ…」
「バイデン氏はここ数年、自分の側近としか接してこなかった」
アメリカ政治外交史を専門とする三牧聖子准教授は、バイデン大統領の高齢による認知機能の低下よりも、それによる弊害を認識しながら状況を隠してきた大統領陣営に問題があると話す。
同志社大学 三牧聖子 准教授:
「ここまで認知機能が衰えていることを討論会で見るまで多くの人が知らなかったということが問題視されていて…老いだけではなく、本当に大統領4年間できるのかという状況に関して大統領に近い人たちが隠してきた…」
番組ではアメリカの政府関係者と密に連絡を取り合っているという人物に話を聞くことができた。彼によると、バイデン氏の衰えは政権内でもあまり知られていなかったのではないかという。
シドニー大学アメリカ研究センター ジャレット・モンドシャイン 研究ディレクター:
「オフレコでバイデン続投に反対する人は、民主党議員の過半数を占めている。表立って言わないのはバイデン氏が選挙でトランプ氏に負ける原因を作りたくないからだ。“ジョー・バイデンは撤退すべきだ”と言うことはバイデン氏の候補者としての弱体化につながると恐れているのだ
政権内部の多くがあの討論会のパフォーマンスを見て驚いた。バイデン氏はここ数年、自分の側近としか接してこなかった。他のホワイトハウスのスタッフが大統領に接する機会を制限してきた。大統領のために働く多くのスタッフがバイデン氏の今の状況を知らなかったのだ」
今月6日のニューヨークタイムズ紙はホワイトハウスの高官の話として「バイデン氏は再選を目指すべきではない」「ここ数か月話すスピードが遅くなり、たどたどしい…、着実に老けた兆候…」という記事を載せた。
これまでバイデン政権ではトランプ政権の頃と違ってこのような情報リークは殆ど無かったとモンドシャイン氏は言う。
シドニー大学アメリカ研究センター ジャレット・モンドシャイン 研究ディレクター:
「討論会で一変した。意図的に流すリークではなく、情報が流れるということはホワイトハウス内部に反対意見や不一致があることの表れだ。バイデン政権は未知の領域に入ったということだろう…」
匿名の意見ばかりではない。民主党の大口献金者としても知られるハリウッドスター、ジョージ・クルーニー氏は言う…。
「バイデン氏は2020年に民主主義を救った。2024年も再び救って欲しい」
2020年は前回の大統領選。そして今回は身を引くことで民主主義を救って欲しいと訴えた。三牧准教授もこのジョージ・クルーニーの発言は重いとした上でこう話す…。
同志社大学 三牧聖子 准教授:
「8か月ぶりの記者会見…、過去の大統領と比べても台本無しの記者会見が本当に少ない。民主主義という観点から、こうした人々と台本無しに接することを制限してきたことや、世論調査でも過半数が撤退を求めていることから、バイデン大統領は決断を求められている」
ハリスさんなら『トランプは自分のことしか考えていない重罪犯』ってぐりぐり…
バイデン大統領は結局出馬を断念せざるを得ないだろうというのが大方の見方だ。となると話題はポスト・バイデンだ。有力候補はやはり副大統領であるカハラ・ハリス氏だろう。
今月気が早いアメリカメディアが行った世論調査では、ハリス氏が民主党候補になった場合の支持率はトランプ氏47%に対してハリス氏49%と若干上回った。
ハリス氏については人気がないとかパワハラでスタッフが良くやめるとか、巷間悪い噂も流れるが、ワシントンD.C.ロビイスト、レスター・マンソン氏はハリス氏をこう語る。
「スタッフからとても好かれており、好感の持てる人。事務所のスタッフが厳しい環境で働き多くが辞めているが、成果を上げなければならない仕事で、やめる人が多いことは珍しくない」
賛否両論あろうともバイデン氏よりは勝負になると誰もが見ているようだ。
では、もしハリス氏は候補となって、選挙に勝った場合、アメリカの舵を取る手腕はあるのだろうか…。
笹川平和財団 渡部恒雄 上席フェロー:
「やってみないとわからない…。ただ、副大統領やってるし、その前に上院議員もやって、もともと検察官で、州の司法長官もやってる、これは選挙で選ばれてやってますから…」
大統領選までに揉まれて成長するので大丈夫というのが渡部氏の見方だ。
一方、かつて民主党陣営として大統領選に協力した経験を持つ海野素央教授は、ハリス氏に大いに期待している。
明治大学 海野素央 教授
「ハリスさんが自分のイメージを変えるのはトランプさんとのテレビ討論会になると思います。今回の(バイデン氏が精彩を欠いた)テレビ討論会の10日前新しいテレビ広告を打った。その広告というのは『トランプは自分のことしか考えていない重罪犯』という…。
にもかかわらず本番でバイデンさんは(そのフレーズを)1回しか使っていない。ハリスさんならおそらく『重罪犯』一点突破でぐりぐり行く、元検事のハリスになればっていう希望が民主党にはある…」
(BS-TBS『報道1930』7月12日放送より)
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