選挙での勝利を祝う集会で演説をする英労働党のスターマー党首=ロンドンで2024年7月5日、AP

 英国の下院(定数650)総選挙が4日、投開票された。5日までの開票の結果、キア・スターマー党首(61)率いる最大野党の中道左派・労働党が過半数を大きく上回り、過去最多だった1997年総選挙の418議席に迫る大勝となった。スターマー氏はチャールズ国王の任命を受け、5日に新首相に就任する。労働党はブラウン政権(2007~10年)以来、14年ぶりに政権を奪還した。

 一方、リシ・スナク首相(44)率いる与党の中道右派・保守党は、過去最少だった1906年の156議席を下回る大敗を喫した。シャップス国防相、トラス前首相らは落選したが、当落線上と報じられていたスナク氏とハント財務相は議席を守った。

 スターマー氏は「変革は今、始まる。働く人々のために国家を再建する。希望の光が英国に輝いている」と勝利宣言した。スナク氏は「国民は厳粛な判断をした。私は責任を取る」と敗北を認め、スターマー氏に電話で祝意を伝えた。

 英BBC放送によると、日本時間5日午後6時現在の各党の議席は、労働党412(前回19年は203、出馬時は独立候補の下院議長を含む)、保守党120(同365)、自由民主党71(同11)――など。

 このほか、トランプ前米大統領の友人のファラージ元欧州議会議員が党首を務める右派ポピュリスト政党・リフォームUKも初めて4議席を獲得した。

 英国からの「分離独立」を目指し、地元で根強い人気のスコットランド民族党(SNP)は近年、党資金流用疑惑などの不祥事に揺れており、前回の48議席から9議席に激減した。

 19年の総選挙では、欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を掲げるジョンソン元首相の保守党が大勝した。だがその後、ジョンソン氏は新型コロナウイルス流行中のパーティー参加が問題視され、辞任。後任のトラス氏も急激な減税案が市場の混乱を招いて辞任するなど迷走が続いた。

 今回は、生活費高騰対策や不法移民への対応、医療充実などが争点となった。だが選挙前から保守党離れは深刻化しており、挽回は困難な状況だった。

 労働党は前回、「鉄道国有化」案など社会主義色の濃い政策を打ち出したコービン前党首の下で惨敗した。この反省から、スターマー氏は「ビジネス、国防重視」など中道寄りに党をシフトさせ、広範な支持獲得に成功した。

 英国では25年1月までの総選挙実施が決まっていたが、インフレの収束傾向を受け、スナク氏は5月22日、解散・総選挙を発表した。【ロンドン篠田航一】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。