英国の下院(定数650)総選挙は4日午後10時(日本時間5日午前6時)に投票が締め切られ、開票が始まった。英メディアが発表した出口調査によると、キア・スターマー党首(61)が率いる最大野党の中道左派・労働党が400議席超を獲得し、安定多数を確保する勢いだ。一方、リシ・スナク首相(44)が率いる与党の中道右派・保守党は大敗する見通しで、ハント財務相、シャップス国防相ら主要閣僚も議席を失う可能性が報じられている。大勢判明は日本時間5日午後になる見込み。
労働党の勝利が決まれば、チャールズ国王の承認を経て5日中にスターマー氏が新首相に就任し、ブラウン政権(2007~10年)以来14年ぶりの労働党政権が誕生する。
英BBC放送などの共同出口調査による予測獲得議席数は、労働党410(前回19年は203=出馬時に独立候補だった下院議長を含む)▽保守党131(同365)▽自由民主党61(同11)――など。
このほか、トランプ前米大統領の友人のファラージ元欧州議会議員が党首を務める右派ポピュリスト政党・リフォームUKも初めて13議席を獲得する勢いだ。
一方、英国からの「分離独立」を目指し、地元で根強い人気を誇るスコットランド民族党(SNP)は近年、党資金流用疑惑などの不祥事に揺れており、前回の48議席から今回は10議席に激減する見通し。
19年の総選挙では、欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を掲げるジョンソン元首相の保守党が大勝した。だがその後、ジョンソン氏は新型コロナウイルス流行中のパーティー参加が問題視され、22年に辞任。後任のトラス前首相も急激な減税案が市場の混乱を招いて約1カ月半で辞任するなど混乱が続いた。
今回は生活費高騰対策や不法移民への対応、医療の充実などが争点となった。だが選挙前から保守党への支持率は低迷し、挽回は困難な状況だった。
労働党は前回、「鉄道国有化」など社会主義色の濃い政策を打ち出した党内左派のコービン前党首の下で惨敗した。この反省から、20年に党首に就任したスターマー氏は「ビジネス、国防重視」など中道寄りに党をシフトさせ、「労働党は変わった」と訴え続けた。
ロイター通信は今回の出口調査を受け、「スターマー氏への熱狂的な支持はなかったが、『変化の時』という彼のシンプルなメッセージが有権者の共感を得た」と分析した。
英国では25年1月までに総選挙を実施することが決まっていたが、インフレの収束傾向を受け、スナク氏は5月22日、解散・総選挙を発表した。【ロンドン篠田航一】
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