中印首脳のすれ違いは、両国間に吹く「すきま風」を象徴しているようだ。
中国の習近平国家主席が3~4日、カザフスタンで開かれた「上海協力機構(SCO)」首脳会議に出席した。インドも加盟国の一つだが、モディ首相は今回出席を見送り、久しぶりの直接対話はまたも実現しなかった。
国境紛争などを抱える中印はトップ外交が停滞している。習氏とモディ氏が最後に開いた首脳会談は2019年にまでさかのぼる。23年8月に南アフリカで開かれたBRICS首脳会議の際に2人は顔を合わせたが、中国外務省が「言葉を交わした」と表現する立ち話の短い接触にとどまった。同9月、インドで主要20カ国・地域(G20)首脳会議が開催されたが、習氏は不参加という異例の対応をした。同じ多国間の枠組みに名を連ねながら、2人がじっくりと懸案を話し合う機会がない状況が続いている。
関係の冷え込みが長期化しているのは国境紛争以外にも火種が絶えないからだとみられる。習指導部はインドと対立するパキスタンの後ろ盾となり、軍事面にも支援を広げる。また、スリランカやモルディブなど南アジア諸国との連携を強め、インド洋への海洋進出にも積極的だ。
インドはこうした中国の動きに警戒を強めている。さらに「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国のリーダーの座を巡っても、インドは中国に対抗意識を燃やしているようだ。
そんなぎくしゃくした関係があらわになる出来事が最近もあった。6月28日、北京市で「平和五原則」の70周年記念大会があり、習氏は演説でグローバルサウスとの連携強化を打ち出した。
相互不可侵などからなる五原則は1954年、中国の周恩来首相とインドのネルー首相による共同声明で発表された。ところが、習氏の演説では、ゆかりが深いはずのインドへの言及は一言程度で、会場にインドからの要人も見当たらなかった。10年前の60周年記念大会にはインドの副大統領が出席し、習氏は演説で中印友好の歴史を強調してインドのことわざを引用するなどしており、対応の違いは明らかだ。
一方で隣国である中印は互いに決定的な対立も望んでおらず、カザフスタンではモディ氏の代わりにSCO首脳会議に出席したジャイシャンカル外相が王毅共産党政治局員兼外相と会談して国境問題について話し合った。今後、習氏とモディ氏が顔をそろえる機会は10月にロシアで開かれるBRICS首脳会議などがあり、トップ会談の環境が整うのか、引き続き注目を集めそうだ。【北京・河津啓介】
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