11月の米大統領選で再選を目指すバイデン大統領(81)を巡り、民主党内でも高齢不安に歯止めがかからなくなっている。2日には党内で初めて現職の連邦議員が公然と大統領選から撤退するよう求めた。有権者の75%が候補が代わった方が勝機があると回答した世論調査もあり、党内の混乱は当面続きそうだ。
声がかすれたり、言葉に詰まったり…
「バイデン氏が(大統領選からの)撤退という痛みを伴う困難な決断を下すことを望む」。民主党のドゲット下院議員は2日の声明でこう訴えた。
AP通信によると、現職の民主党の連邦議員が公に撤退を要求したのは初めて。ドゲット氏は、1968年に民主党のジョンソン大統領(当時)が大統領選の予備選での不人気を認識して自ら撤退した例を挙げ、「バイデン氏も同じようにすべきだ」と主張した。
バイデン氏は6月27日にあった第1回テレビ討論会で、共和党のトランプ前大統領(78)を相手に声がかすれたり、言葉に詰まったりする場面が目立った。直後の世論調査ではトランプ氏が勝利したと考える人が67%に上り、民主党内でもバイデン氏の体力や認知機能への懸念が一気に高まった。
大統領選が行われる11月5日は、連邦下院(任期2年)全435議席のほか、連邦上院(任期6年)全100議席のうち約3分の1の議席が争われる議会選も同時に実施される。議員にとってはバイデン氏の動向が自身の選挙戦にも影響を与えかねず、今後バイデン氏に撤退を求める声が広がる可能性もある。
こうした中、バイデン氏は懸念の払拭(ふっしょく)に躍起だ。2日にはワシントン近郊であった集会で、6月上、中旬の2度の欧州訪問を念頭に、「討論会の直前に数回世界各地に出張した。賢明ではなかった。スタッフの意見に耳を貸さず、ステージでほとんど眠りそうになった」などと弁明した。
家族は継続支持 民主党の有力者らも
バイデン氏の意思決定に影響を与える可能性があると指摘されている妻ジル氏や次男のハンター氏ら家族も、選挙戦の継続を支持している。
米CNNによると、ジル氏らは6月30日に大統領専用の山荘でバイデン氏と一緒に過ごした際、選挙戦を続けるよう促した。ジル氏は表紙を飾ったファッション誌の取材に「(討論会の)90分間で大統領としての4年間を定義するつもりはない。私たちは戦い続ける」と語った。
また民主党の有力者もバイデン氏の選挙戦継続への支持を相次いで表明している。複数の世論調査では、バイデン氏はトランプ氏に先行を許している半面、討論会の前後でバイデン氏の支持率に大きな変化がないものもあった。
もし、辞退したら…
米CNNが2日に発表した世論調査では、有権者の75%が、民主党はバイデン氏ではなく別の人物を候補とする方が大統領選で勝てる可能性が高いと回答。72%が「バイデン氏は出馬すべきでない」と回答した米CBSテレビの世論調査もあり、今後の世論の動向も注目される。
バイデン氏は6月までに実施された各州の予備選や党員集会のほとんどで圧勝し、8月19~22日に中西部イリノイ州で開催される党全国大会で投票する代議員約4000人の大半を確保している。仮に出馬を辞退すれば、党全国大会で代議員らが投票や話し合いで候補者を決定することになる。
バイデン氏に代わる候補者としては、西部カリフォルニア州のニューサム知事(56)や中西部ミシガン州のウィットマー知事(52)のほか、ハリス副大統領(59)らの名前が挙がる。ただバイデン氏に匹敵するほどの人気や知名度を誇る有力候補はいないのが現状だ。【ワシントン松井聡】
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