北朝鮮とロシアが6月中旬、有事における相互の軍事支援を定めた新条約を結んだことを巡り、国連安全保障理事会は28日に緊急会合を開いた。日本、米国、韓国と欧州諸国は、常任理事国であるロシアの安保理決議違反を指摘し、世界の不安定化を助長するとして批判を強めた。日米韓を含む48カ国と欧州連合(EU)は共同声明で露朝の新条約に「深い懸念」を示した。
会合の冒頭で、国連軍縮担当上級代表の中満泉事務次長は「ロシアを含め、北朝鮮に関わる全ての国は安保理の制裁措置に全面的に従わなければならない」と指摘した。ロシアは、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する安保理の制裁決議に反し、北朝鮮から調達した弾道ミサイルをウクライナで使用した疑いが強まっている。
日本の山崎和之・国連大使は会合で、露朝の軍事協力について「核不拡散態勢に有害な影響を及ぼす。世界の安全保障と経済の根幹を不安定にすることで、国際社会全体に影響を与えかねない」と非難した。米国は、北朝鮮とロシアの擁護を続ける中国を名指しし、露朝の「危険な軍事協力」を終わらせるよう説得すべきだと訴えた。
一方、ロシアのネベンジャ国連大使は「根拠のない批判」だとした上で、北朝鮮との2国間の協力は「米国の軍事同盟と異なり、誰にも脅威を与えない」と主張した。中国も、朝鮮半島の軍事的緊張の責任は米国にあるといった従来の主張を展開した。
北朝鮮の核・ミサイル開発に対する制裁の履行状況を監視してきた安保理の専門家パネルは、ロシアの拒否権行使によって今年4月に活動終了に追い込まれた。安保理筋は「プーチン露大統領から北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記への最大の“贈り物”だった」と指摘する。パネルの後継組織については日米韓が主導して検討が進められているが、議論は収束していない。【ニューヨーク八田浩輔】
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