米中西部ウィスコンシン州ケノーシャで、大統領選のテレビ討論会を観覧する有権者ら=2024年6月27日、秋山信一撮影

 11月の米大統領選では「スイング・ボーター(投票先が揺れる有権者)」と呼ばれる無党派層や中道派の動向が勝敗を左右する。27日開かれた民主党のジョー・バイデン大統領(81)と共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)の第1回テレビ討論会をスイング・ボーターたちはどう見たのか。

 中西部ウィスコンシン州ケノーシャの大学構内の礼拝堂に27日夜、全米各地から約500人の「スイング・ボーター」が集まった。超党派の対話を促す非営利団体「ブレーバー・エンゼルス」が、年次総会に合わせて討論の観覧会を開催。参加者は大型スクリーンに映し出された中継映像を見守った。

 最初に会場を沸かせたのはトランプ氏だった。「文末で何と言ったのか本当に分からない。彼自身も分かっていないんじゃないか」。直前に移民政策に関して、「全体の取り組み(total initiative)」と言おうとして「完全な禁止(total ban)」と言い間違えたバイデン氏をからかった。

 序盤はトランプ氏の方がインパクトがあり、CMで中断に入った時に感想を問われた参加者が「民主党員だが、トランプ氏の方が説得力があった。バイデン氏からトランプ氏に投票先を変えようと思った」と発言する場面もあった。ただ、論戦自体は低調で「ショーとして面白いだけだ」と不満の声も上がった。

米中西部ウィスコンシン州ケノーシャで、大統領選のテレビ討論会を観覧する有権者ら=2024年6月27日、秋山信一撮影

 後半には泥仕合が激しさを増した。バイデン氏が「妻が妊娠中にポルノ女優のスターとセックスしたりして、いったい何十億ドルの民事賠償を負っているのだ」と批判すると、トランプ氏が「ポルノ女優のスターとはセックスしていない」と否定。観覧会場は失笑に包まれた。

 約90分間に及んだ討論を聞き終えた有権者の多くは「失望感」を漏らした。西部ユタ州の市場調査会社経営、モウリー・ジャイルズさん(53)は「(米国民)3億人以上の中でベストの2人だとは思えない。バイデン氏は高齢で言動が弱々しく、トランプ氏はただのパフォーマーだ」と批判。「民主主義を破壊するトランプ氏には投票しないが、バイデン氏にも投票したくない」と語った。

 西部オレゴン州の無職、キム・スタニックさん(63)は「未来に何をするという話が全くなかった。過去の話、それも誇張ばかりで、ひどい討論会だった。4年前は『トランプ氏に反対』という意味でバイデン氏に投票したが、今回は分からない」と吐露。東部コネティカット州の無職、ゲリー・ホランドさん(73)は「誰かの気持ちを変えるような討論会ではなかった。進行役が候補者にきちんと質問に答えさせるべきだった」と指摘した。【ケノーシャ秋山信一】

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