会談するロシアのプーチン大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記=平壌で2024年6月19日、スプートニク通信・ロイター

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信は20日、ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が19日に平壌で署名した包括的戦略パートナーシップ条約の全文を公表した。第4条で、露朝の一方の国が武力侵攻を受けて戦争状態になった場合に、他方は「遅滞なく自己が保有する全ての手段で軍事的およびその他の援助を提供する」と規定した。集団的自衛権を認める「国連憲章51条に沿う」と明記するなど、事実上の軍事同盟と解釈できる文言を使っている。

 今回の新条約で両国の軍事的な協力関係を、冷戦時代の旧ソ連と北朝鮮の関係と同水準にまで引き上げた形だ。ただ、19日の記者発表などで、金氏は「同盟の水準だ」と強調した一方、プーチン氏は「同盟」という表現は使わなかった。

 ロシアがウクライナ侵攻を続ける中、これを支持する北朝鮮は武器・弾薬を大量に供与していると欧米などに指摘されている。プーチン政権は、ウクライナのクリミア半島や東・南部4州を「ロシア領」と主張しており、これらの地域も新条約の対象に含まれるとみられる。

 ロシアの前身の旧ソ連と北朝鮮が冷戦時代の1961年に締結した友好協力相互援助条約も、一方が武力攻撃を受けた場合に他方が軍事的援助などを提供するとしていた。だが、同条約は91年のソ連崩壊で失効。露朝が2000年に締結した友好善隣協力条約は、有事の対応について「双方は速やかに接触する」とだけ規定していた。

 新条約は23条からなる。前文で「覇権主義的な企てと、一極の世界秩序を強要しようとする策動から国際的正義を守護する」とし、「多極化された国際的な体系を樹立する」と表明。米国主導とみる現在の世界秩序に団結して挑戦する意思を明確にした。ロシアはウクライナ侵攻で米欧などから、北朝鮮は核・ミサイル開発で国連などから、それぞれ厳しい制裁を受けている。

 第5条では、一方が他方の「核心的利益を侵害する協定」を他の国と結ばないことを義務化し、結束を確認。第6条では、戦争を防ぎ防衛力を強化する目的で「共同措置を取るための制度を準備する」ことを盛り込んだ。

 第10条は、宇宙、平和的原子力、情報技術などを含む科学技術分野で交流と協力を発展させると明記した。北朝鮮は軍事偵察衛星の開発でこれまでもロシアの支援を受けているとみられてきた。今後、支援が加速する可能性がある。

 このほか、食料、エネルギー安全保障、サプライチェーン(供給網)など「戦略的意義を持つ分野で増大している挑戦と脅威に共同で対処するため、相互に協力する」との条文も盛り込んだ。【ソウル福岡静哉】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。