韓国軍合同参謀本部は18日、北朝鮮が韓国との軍事境界線付近で防衛設備を強化しているとして、土木作業などを撮影した写真を公開した。北朝鮮は今年に入って長年にわたる「朝鮮半島統一」の方針を完全に放棄し、北朝鮮と韓国の「2国家」論を主張しており、「反統一」を加速させるための作業を進めているとみられる。
画像には、北朝鮮の兵士が横一列に並んでしゃがみながら地雷を埋設したり、シャベルやつるはしを手に歩いたりする様子が写っている。大型のショベルカーを使って地面に溝を掘る様子や、川に新しい橋をかける姿も確認できた。さらに現在は使われていない南北を結ぶ鉄道の線路も撤去していた。
北朝鮮は2023年11月、緊張緩和のため18年に韓国との間で締結した軍事合意を破棄した。その後、監視所の建設など北朝鮮軍の動きが活発化した。
韓国軍合同参謀本部の関係者によると、対戦車用の防壁とみられるコンクリート製の構造物を4カ所で確認し、最長で数百メートル、短いものは10メートル余り。高さは4~5メートルという。軍事境界線の南北にはそれぞれ2キロにわたり非武装地帯(DMZ)が設けられているが、壁は軍事境界線から北に2キロの地点に沿って造られ、建設の初期段階とみられる。韓国軍は、国境線化する意図があるかは「継続的な分析が必要だ」としている。
同本部によると、北朝鮮は南北を結ぶための鉄道路線「京義線」と「東海線」のレール周辺で地雷の埋設を進め、東海線ではレールの撤去も始めている。南北は18年の首脳会談で、朝鮮半島の東側を南北に走る東海線と、西側を南北に走る京義線の建設で合意。着工式も実施されたが、関係悪化で頓挫していた。
韓国軍は地雷埋設について「数回の地雷爆発事故で多数の死傷者が出ているにもかかわらず、無理に作業を進めている模様だ」と説明し、今後も作業地域が拡大すると見ている。韓国軍はこうした動きを、軍人や住民の脱北や亡命の防止など「内部統制力を強化するための措置」と説明している。
DMZでは9日、作業中の北朝鮮軍兵士10人以上が軍事境界線を一時越え、韓国軍の警告射撃を受けて撤収。韓国軍関係者によると、18日にも20~30人の北朝鮮軍兵士が一時的に軍事境界線を越える事案が発生した。DMZでの一連の土木作業と関連があるとみられている。【ソウル福岡静哉】
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