2人を迎えてくれたのは、満場の拍手でした。
阪神タイガースOBの「鉄人」金本知憲さん、「超人」糸井嘉男さんが今月相次いで、台湾の地元プロ野球チームの始球式に登場。球場を埋め尽くした縦じまユニフォームの地元ファンらの盛り上がりに、2人はそろって驚きの表情をみせました。
日本の虎ファンを対象にしたイベントならいざ知らず、阪神OB選手がなぜ台湾でこんなに大歓迎されるのでしょう。その背景には日台野球交流の深く長年にわたる歴史がありました。
(ANN上海支局長・尾崎文康 台北事務所・頼佳良)
「鉄人」登場に大歓声 「阪神の試合みたい…」
阪神タイガース元監督・金本さんが6月15日夕に姿を現したのは、台湾・台北市内にある「台北ドーム」です。
「金本さん!」と日本語でアナウンスされ一礼して走り出すと、ぐっとバットを握り、何度も素振りをし たうえで始球式の打席に立ちました。
台北ドームを訪れた金本知憲さん この記事の写真は7枚台湾への訪問は、「学生の時以来」といいます。
客席を埋めたファンの多くは、阪神をイメージした縦じまのユニフォームを着ていてます。現役時代と同じ背番号「6」を付けた金本さんの登場に大歓声を上げました。
これは、地元プロ野球チームの「中信兄弟」が企画した阪神甲子園球場100周年を祝う試合の目玉企画です。
マスコットが投げた自分の股下を抜ける大暴投を、丁寧に空振りした金本選手に、観客はまた盛んに拍手を送りました。
台北ドームでバットを握る金本知憲さんイベント後、台湾の報道陣に囲まれた金本さんは、現地での日本野球人気を知って驚いた様子。
「(客席に)ファンの方がたくさんいて、阪神の試合を見に来てくれているような感じがしました」と話し、しみじみとこう口にしました。
「ちょっと照れくさい気持ちもありましたが、野球場に来ると、昔を思い出しました。『野球やりたくなってきたな』という気持ちにさせてくれるのが、球場なのかと」次のページは
突然の「超人」腕立て伏せに大盛り上がり突然の「超人」腕立て伏せに大盛り上がり
翌16日には、同じく阪神OBの「超人」糸井さんが、投手として始球式へ。こちらも現役時代と同じ背番号「7」を付けています。
いざ投球、という瞬間に、突然マウンドの上で「腕立て伏せ」を始めて球場をわかせました。
台湾メディアの前で筋肉を披露する糸井嘉男さん立ち上がるとそのまま右腕をグルングルンと2度回し、打者のいない中で、捕手めがけて速球を投げ込みました。高めの球でも場内には「好球!(ストライク)」のアナウンスが。
しっかりウケを取った腕立て伏せについて、「ちょっと(体を)ほぐしました」と、投球後に地元メディアに語りました。糸井さんも、観客の関心の高さに驚いたようです。
盛り上がりをみせる球場の観客席 「(台湾には) 想像していたよりも熱狂的なファンもいますし、素晴らしい環境だなと思いました」 「空港から出てくると、ファンの方がめちゃくちゃおられて、サインもして。ちょっと(自分が)スターだと勘違いしました」次のページは
阪神OBが監督に…交流のルーツは「甲子園」阪神OBが監督に…交流のルーツは「甲子園」
実は、地元チームの「中信兄弟」の監督はこちらも阪神OBの平野恵一さんです。それが縁となって始球式のイベントが実現しました。
平野さんは金本さんが監督時代、阪神でコーチを務めていた間柄です。
「師匠でもある金本さんを呼べたのはうれしい」(平野さん)と語り、金本さんからは「本当にうれしい。本当にがんばって ほしい」とエールを送られていました。
「甲子園100周年記念イベント」を台湾で開催するに至る背景には、さらに長い歴史があります。
2003年から13年まで阪神でプレイした台湾出身の林威助(リンウェイツゥ)選手は、台湾の「中信兄弟」で監督も務め、就任した年に優勝。その翌年には現在の平野監督をコーチに招いて2連覇を果たしています。
閉会式で整列する準優勝の嘉義農林(右)と優勝した中京商の選手たち=1931年08月21日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場(朝日新聞社)
さらに、台湾ではかつて、日本による統治時代に地元の球児たちが「甲子園大会」に台湾代表として出場していたことがありました。中でも1931年に決勝戦まで進出した嘉義農林学校のエピソードは、2014年に台湾で「KANO 1931海の向こうの甲子園」として映画化され、ヒットしました。いまでも兵庫県の甲子園は、日本観光に訪れる台湾の人たちにとって人気のスポットになってます。
イベントの2日間は、阪神をイメージしたTシャツなどのグッズも販売され、「デザインがかわいい」と台湾の若い世代にも好評でした。
日本ではアメリカのメジャーリーグの人気が高まっていますが、野球を愛する人々から海を越えて、日本のプロ野球へも熱い視線が送られています。
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