台湾は台北・故宮博物院の収蔵品100点以上を来年、チェコに貸し出すことを決めた。清代の工芸品「翠玉白菜(すいぎょくはくさい)」などの有名な文化財が含まれている。台湾とチェコは近年、関係が良好で、文化面でも交流を深める狙いがある。
チェコ国立博物館(プラハ)が来年9~12月に開催する特別展に合わせて貸し出す。同館のルカシュ館長と台北・故宮博物院の蕭宗煌院長が12日、台北市内で協力協定に調印した。
目玉となる翠玉白菜はひすいの色合いを生かして、虫がとまった白菜のように彫り上げた名品。故宮博物院の中でも特に高い人気を誇り、海外で展示されるのは2014年に東京で行われた特別展以来で、史上2度目という。絵画「清院本清明上河図」なども出品する。同博物院によると、約20年前から開催を模索していたといい、「チェコとの友好関係の新たな到達点になる」としている。
台湾は故宮の所蔵品を海外展示する際、相手国で差し押さえされない法的保障を求めている。多くの所蔵品は共産党との内戦に敗れた国民党が中国大陸から運び込んだもので、海外に持ち出した場合に中国が差し押さえや返還を求める可能性があるためだ。チェコ議会は今年4月に文化財保護法を改正し、台湾側の懸念が払拭(ふっしょく)された。
一方、14日には台北市内にチェコ文化を紹介する「チェコセンター」が開館した。チェコ外務省の関連団体が運営し、これまでに世界25カ国に設置。写真展などを通じて文化の理解を広めるという。
台湾の頼清徳総統は14日、訪台したチェコ上院のドラホシュ第1副議長と会談し、故宮博物院の所蔵展への期待を示すとともに、文化や産業分野での協力関係を強化する意向を表明。「ともに民主主義と自由の価値を守っていきたい」と述べた。
台湾とチェコの間には正式な外交関係はないが、ここ数年、議員団や閣僚の往来が相次ぐなど交流が盛んになっている。23年3月にはアダモバー下院議長が政府関係者ら約160人と訪台し、立法院(国会)で演説。チェコスロバキア(当時)が旧ソ連に長く占領された歴史に触れながら、「我々はいかなる状況でも台湾とともにある」と連帯を示した。
チェコは16年に中国の習近平国家主席が公式訪問して戦略的パートナーシップ協定を締結するなど、一時は経済面での対中傾斜を強めた。だが中国による投資が約束通りに実行されないと批判が強まった上、中国がウクライナに侵攻したロシアと近い関係を保っていることで不信感が広がった。【台北・林哲平】
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