ガーランド米司法長官=ワシントンで2024年6月4日、AP

 米連邦下院は12日、機密文書の持ち出しを巡り、バイデン大統領が検察官の聴取を受けた際の録音の提出を拒んだとして、ガーランド司法長官を議会侮辱容疑で刑事訴追するよう勧告する決議案を賛成多数で可決した。司法長官が同容疑で訴追勧告されるのは3政権連続。いずれも野党が主導する議会下院の調査に協力しなかったことが原因で、近年の党派対立の深刻化を反映している。

 バイデン氏は2023年10月、オバマ政権の副大統領時代(09~17年)の機密文書を自宅などに持ち出していた問題で、特別検察官の聴取を受けた。司法省は今年3月に下院司法委員会に聴取を記録した文書を提出したが、録音は「将来の捜査で、政府当局者の協力が得にくくなる」として提出を拒否していた。

 12日の下院本会議で、決議は216対207で可決された。共和党は1人以外は賛成し、民主党は投票した全員が反対した。ただ、過去の事例でも司法当局は勧告に応じておらず、今回も象徴的な意味合いしかないとみられる。

 共和党は11月の大統領選に向けて、トランプ前大統領が四つの刑事事件で起訴されたことを含めて「民主党が司法権力を武器として使っている」と訴えている。ガーランド氏の訴追を勧告したのも「司法当局はバイデン氏を擁護している」と印象づける政治的狙いがある。

 一方、バイデン氏側には録音が公開されることへの懸念があったとみられる。特別検察官は報告書で、任意聴取の際に「バイデン氏の記録力は著しく低下しているようだった」と指摘しており、公開されれば高齢不安に拍車がかかる可能性があった。

 ジョンソン下院議長(共和党)は12日の声明で「調査に何が必要かを決めるのは議会で、合法な議会の要請を拒否することには結果が伴う」と指摘。一方、ガーランド氏は「議会の権限を党派的な武器に変えたことに深く失望した」と訴追勧告を批判した。【ワシントン秋山信一】

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