主要7カ国首脳会議(G7サミット)が13日、イタリア南部プーリア州で始まる。2024年は世界的な「選挙イヤー」だ。来年のサミットは各国首脳の顔ぶれが大きく変わる可能性があり、特にG7の枠組みに否定的だった米国のトランプ前大統領が返り咲けば、ウクライナ支援など課題への対処で結束が乱れるとの懸念もある。
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来年のサミットにいるのは誰か
G7各国のうち国政レベルの選挙が年内に予定されているのが米国、英国、フランスだ。ドイツでは秋にザクセン州など三つの州議会選を控える。日本でも9月に自民党の総裁選が実施される予定で、米英日の3カ国では大統領や首相が交代する可能性もある。
とりわけ、11月の米大統領選で共和党候補に指名されるトランプ氏は17~21年の在任中、G7のような多国間の枠組みを軽視した。今回のG7サミットはトランプ氏の返り咲きをにらみつつ、安定的なウクライナ支援などに道筋を付けられるかが焦点の一つとなりそうだ。
トランプ氏が過去に出席したG7サミットは混乱続きだった。
19年のビアリッツ・サミット(フランス)では、イラン情勢や経済政策などで米国と他国の首脳との足並みが乱れた。包括的な首脳宣言は見送られ、発表されたのは1枚の文書だけだった。18年のシャルルボワ・サミット(カナダ)では「反保護主義」を盛り込んだ首脳宣言の採択後、トランプ氏が承認を拒否する事態まで起きた。
トランプ氏は在任中、G7にロシアを加えたG8に戻すよう模索したこともあった。ロシアは14年にウクライナ南部のクリミア半島を一方的に併合したためG8から排除されたが、トランプ氏は「G7ではロシアに関する多くの会合があり、ロシアを入れた方が適切だ」と主張。他国の反対で実現しなかったが、トランプ氏はG7の体制に終始懐疑的だった。
こうした過去の混乱に加え、トランプ氏のウクライナ情勢に対する姿勢が不透明なことも、各国がトランプ氏の返り咲きを警戒する要因になっている。
「(大統領になれば)24時間以内に戦争を終わらせる」。トランプ氏はロシアによるウクライナ侵攻についてこう豪語してきた。ただ具体策は明言しておらず、ウクライナに領土の一部をロシアに割譲するよう圧力をかけることで、戦争を終結させることを検討しているとの報道もあった。
また、米国のウクライナ支援は、下院で多数を占める共和党の反対で長く滞ってきた。トランプ氏もウクライナ支援に消極的な姿勢を見せていた。だが、4月に支援法案が成立の見通しになると「ウクライナの存続と強さは我々にとっても重要だ」とSNS(ネット交流サービス)に投稿しており、方針を修正した可能性もある。
一方、民主党のバイデン大統領は多国間協調を重視する姿勢を鮮明にしてきた。21年に英コーンウォールで開催されたG7サミットに初めて参加した際は「米国が戻ってきたことを明確にする」と宣言。このサミットでは、中国を念頭に「台湾海峡の平和と安定の重要性」との文言を米主導で首脳宣言に初めて盛り込むなど、民主主義国家の結束をアピールした。
前回の広島サミットではウクライナのゼレンスキー大統領が招かれた。G7はウクライナへの連帯を前面に打ち出し、今回のサミットでもウクライナ支援での結束を目指している。
ただ、衆院解散の時期が注目される日本のほか、米英仏などで実施される選挙の結果次第では、政治的な空白が生じたり、内政が混乱したりする可能性がある。G7各国は今回のサミットで結束を確認すると同時に、ウクライナ支援などの課題に今後も継続的に対応できるかが重要になる。【バーリ(イタリア南部)松井聡】
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