韓国大統領府は3日、国家安全保障会議(NSC)実務調整会議を開き、北朝鮮との間で2018年9月に結んだ南北軍事合意の効力を、相互信頼が回復するまで全面停止すると決めた。4日の国務会議(閣議)で正式決定する。停止すれば、韓国は軍事境界線付近での軍事訓練などが可能になり、緊張が高まるおそれがある。
韓国NSCの会議は、ごみ付きの風船を飛ばすなど最近の北朝鮮の挑発が「国民に被害と脅威を与えている」と厳しく評価した。軍事合意については、北朝鮮が23年11月に事実上の破棄を宣言したことから、「有名無実化しており、韓国軍の態勢にも多くの問題をもたらしている」と指摘。効力の停止で軍への制約がなくなり、「挑発に対して即時的な措置が可能になる」としている。
韓国政府は、軍事境界線付近での拡声器による宣伝放送の再開を検討中だ。宣伝放送は北朝鮮の兵士らに心理的影響を与える効果があるとされ、北朝鮮側は警戒している。
北朝鮮は5月下旬以降、ごみ付きの風船約1000個を韓国へ飛ばした。韓国側に向けては、全地球測位システム(GPS)を妨害する電波も連日発信しているという。韓国大統領府は2日にNSCを開催し、「北朝鮮にとって耐えがたい措置に着手する」と警告。同日夜、北朝鮮の国防省は風船を飛ばす行為の中断を表明していた。
南北軍事合意は、文在寅(ムンジェイン)前政権下の18年9月に、緊張緩和を目的として、南北首脳会談で署名された。合意では、軍事境界線周辺及び韓国が海上境界線と位置づける北方限界線(NLL)周辺に「緩衝区域」を設定。この区域内での敵対行為を中止し、飛行や軍事訓練を禁止した。
しかし、19年2月に米朝の非核化交渉が決裂して以降、北朝鮮は軍事境界線付近で何百発もの砲撃を行うなど違反行為を繰り返してきた。23年11月には北朝鮮が軍事偵察衛星を発射したことを受け、韓国政府が軍事合意のうち飛行禁止区域を定めた条項の効力を停止。これに北朝鮮が反発し、事実上の破棄を宣言していた。【ソウル日下部元美】
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