トランプ前米大統領(77)が「不倫関係」にあったとされる元女優に支払った口止め料をめぐる事件の初公判が15日、米東部ニューヨーク州の裁判所で開かれた。米国史上、大統領経験者で初めて刑事事件の被告となったトランプ氏は、入廷前に「政治的迫害だ」と記者団に主張。公判はほぼ連日行われるため、返り咲きを狙う11月の大統領選に向けた選挙活動に支障が出ると不満をあらわにした。
トランプ氏が起訴された四つの刑事事件で公判が始まるのは初めて。米メディアによると、トランプ氏は紺のスーツに白いワイシャツ、赤いネクタイ姿。マーチャン判事から「手続きを妨害すれば、あなた不在のままで裁判を進める。分かりましたか」と尋ねられると、トランプ氏は「分かりました」と答えた。また、無断で欠席した場合は逮捕状が発行される可能性があると直接警告を受けた。
午前中から証拠採用が行われ、検察側と弁護側がそれぞれ意見を述べた。12人の陪審員と6人の補欠を選ぶ手続きも始まり、この日は96人の候補が出廷したが一人も決まらなかった。選任手続きは数日間続く見込みで、その後に冒頭陳述などの実質審理に入る。裁判所によると、公判は水曜を除く毎週4日間開かれ、6~8週間かかる見通し。トランプ氏は毎回出席の必要がある。
トランプ氏は閉廷後、記者団に対し、選挙活動などが実質的に制限されることについて「これは急進的な民主党左派にとって理想的だ」と述べ、民主党のバイデン政権を批判。質問には答えずに、裁判所を後にした。
起訴状などによると、トランプ氏は2016年の大統領選で不利な情報を隠すため、性的関係を持ったと主張する元女優に顧問弁護士を通じて13万ドル(約2004万円)の口止め料を選挙直前に支払った。その後、立て替えた弁護士に親族企業を通じて弁済した際、口止め料支払いの発覚を恐れて「弁護士費用」と偽り、会計処理した罪に問われている。
トランプ氏は昨年3月に起訴され、翌月の起訴内容の認否で無罪を主張した。元女優と性的関係を持ったこと自体も否定している。トランプ氏はこの他に、20年大統領選の結果を覆そうとした事件など三つの刑事事件でも起訴されている。トランプ氏は公判の先延ばしを求めており、残る三つの事件の公判期日は決まっていない。【ニューヨーク中村聡也】
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