5年に1度の南アフリカ総選挙の投票が29日、始まった。かつてネルソン・マンデラ氏(2013年に死去)が率い、アパルトヘイト(人種隔離)政策終了後に一貫して政権を担ってきた与党アフリカ民族会議(ANC)は支持率が低迷。民主化から30年の節目の年に、初めて国会で過半数割れする公算が大きくなっている。
事前の各種世論調査では、ANCは支持率が4割ほどで第1党を維持するものの、前回選に比べて大きく支持を落としている。白人や、混血グループ「カラード」を支持基盤とする「民主同盟」や極左的な主張で黒人の間で支持を集める「経済的解放の闘士」(EFF)などが続く。開票開始後、大勢判明には数日かかる可能性がある。
南アでは1990年代まで、少数派の白人が政治や経済などさまざまな面で黒人を差別するアパルトヘイトが続いた。94年に初めて全人種が参加して行われた民主的な総選挙でANCは6割超を得票して圧勝し、マンデラ氏が大統領に就任。以降、5代にわたって政権を担ってきた。
だが、歴代政権下で汚職や腐敗が深刻化。白人と黒人の間の経済格差が縮まらないうえ、黒人同士でも格差が広がり、国民の不満が高まっている。南アフリカの大統領は国会議員の互選で選ばれる。ANCは単独過半数を取れなかった場合、少数政党との連立で政権を維持したい意向だが、権力基盤の弱体化は避けられない情勢だ。【平野光芳】
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