アフリカを代表する経済大国の南アフリカ。29日に総選挙をひかえる中、解消されない格差や深刻な電力不足に、かつてないほど国民の政治不信が高まっています。現地を取材しました。
総選挙前の最後の週末となった25日、南アフリカ各地で各政党の選挙集会が開かれました。
与党・ANC(アフリカ民族会議) ラマポーザ大統領
「この30年間、私たちはともに南アフリカを創り上げてきましたね」
アパルトヘイト=人種隔離政策が撤廃され、30年前、初めて全ての人種が参加する民主的選挙が行われた南アフリカ。
以来、ネルソン・マンデラが率いた与党・ANCは、国民の絶対的な支持のもと、政権を維持してきました。
ところが、いまANCから国民の心が離れていっているのです。
最大都市ヨハネスブルクの貧困地区に住むンフレニさん(28)。失業率が30%を超えるこの国で、仕事に就けず、集めたごみをわずかなお金に換えて暮らしています。
ヨハネスブルク在住 ンフレニさん
「きのう半分食べて、残りはきょうの分。妻と2人で分けます」
貧しい生活にさらに追い打ちをかけているのが、「災害」とも言われるほどの“電力不足”です。
記者
「ヨハネスブルク市内の交差点なんですが、信号機のライトがつかなくなってしまっています」
去年1年間の停電日数は300日近くにのぼり、ビジネスや日常の生活に大きな支障をきたしています。
ヨハネスブルク在住 ンフレニさん
「20ランド(170円)手に入るとします。電気さえあれば、トウモロコシの粉、トマト、じゃがいもを買ってきて、調理することができます。でも、電気がないので着火剤を買ってきて、火を起こさなくてはいけない。それが22ランド(187円)する。着火剤を買うだけで、もう赤字なんです」
この電力危機を招いた国営電力会社とANCの癒着が報じられると、国民の怒りは限界に達しました。
ANCに対抗するのが、白人が率いる最大野党。先月の世論調査での支持率は21%ですが、国民の8割が黒人の南アフリカで、支持は頭打ちです。
そんな中、第2野党として注目されるのが、黒人による左派の過激政党「経済的解放の闘士」。白人の土地の強制収用などを主張し、11%の支持率を集めます。
EFF(経済的解放の闘士) ンドロジ議員
「80%いる黒人が国土のわずか7%の土地しか持っていない。“経済的アパルトヘイト”が続いているんです。白人は富を共有する覚悟が必要です」
今回、初めて投票するという若者に選挙について聞くと…
初めて投票する人
「上の世代は未だにANCが国民のために闘ってくれると幻想を抱いているんだ。実際には汚職にまみれて、経済をめちゃくちゃにしているのに」
29日に投票日を迎える総選挙。ANCは初めて過半数割れする見通しが強まっています。
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